ギリシャの財政危機以降、欧州でソブリンリスクの高い国々としてたびたび登場するのが「PIIGS」だ。
PIIGSとは、ユーロ圏の中にあるポルトガル・イタリア・アイルランド・ギリシャ・スペインの頭文字を取った略語である。この語の発音は「pigs(豚)」と同じで侮蔑的な意味が込められているが、その由来の通り、PIIGSはユーロ圏諸国の中で落ちこぼれ的な存在だ。ギリシャ危機に伴い、同様に双子の赤字を抱える他のPIIGS諸国も財政収支のさらなる悪化が懸念され、ユーロ暴落の一因となった。
PIIGSはもともと欧州の成長株ともいわれていた。なぜこうなったのか。そこにはドイツの政策に振り回されるユーロ加盟国の姿がある。
「通貨を一つにしたことにより、競争力を調整する手段がなくなった」とみずほ証券シニアエコノミストの飯塚尚己氏は分析する。
現在、PIIGSには景気対策のためにユーロ圏の中央銀行であるECBの金融緩和が必要だが、自国の景気が回復しつつあるドイツが真逆の方針であるだけに実現できないのだ。
また、PIIGSは自国通貨を下落させて経常収支を改善させたくとも、ユーロ加盟国であるためそれもできない。そのうえ、ドイツの経常収支が年々改善されると同時に、PIIGSの対独赤字は悪化している。ドイツの景気を重視しすぎることが、ユーロ圏経済を不安定にしているのだ。
「このままいくとユーロは崩壊する」(飯塚氏)。PIIGSの未来はすなわちユーロの未来ともいえる。
(PANA=写真)