7月、野田佳彦財務相は、「財政運営戦略」において「ペイゴー原則」を導入すると会見で発言した。
ペイゴー原則とは、新たな財政支出を求める場合に、その財源が同時に必要だというもの。新たな財政支出を行う場合は、同時に別の歳出を削減するか、増税する必要がある。「ペイゴー(PAYGO)」とは、「Pay as you go」(現金、都度払いの意)の略である。
ペイゴー原則は1990年に米国で成立した「包括財政調整法」という予算執行法で導入、その後クリントン政権において活用され、財政収支が黒字化するきっかけとなった。当時、ペイゴー原則を盛り込んだ同法は財政赤字を直接の対象とすることなく、議員たちに予算を自由につくれる裁量を与えつつ、そのつくり方には規律を課したことが功を奏したのだった。同法は2002年9月末に失効していたが、今年に入ってオバマ大統領は同原則を復活させた連邦債務上限引き上げ法案を可決させた。
では、日本で導入した場合、うまく機能するかどうか。
「ペイゴーを活用する国は多くあるが、それが機能するか否かは、内閣、首相、財務大臣などが、厳しく運用できるかどうかにかかっている」と元一橋大学准教授の田中秀明氏は話す。
たとえば、マニフェストを重視する大臣と財務大臣との対立も想定される。そのような場合、首相が原則を守る決断ができるのか。また、米国の場合、財政黒字に転換するや否やペイゴー原則は守られなくなったという経緯もある。運用のいかんによっては、絵に描いた餅で終わってしまうだろう。
(PANA=写真)