“価格の透明化”はお葬式にまで及んでいる。イオンは昨年9月より葬儀社の紹介業務を開始。葬儀費用を明確化し、賛同した葬儀社を特約店として紹介するという形だ。菩提寺を持たなかったり檀家ではない客には8宗派約600の寺院の紹介も行っており、お布施の目安額も明示した。同社は「あくまで目安であって定額ではない」とするものの、その明朗会計ぶりが話題となって、事前相談も含め問い合わせは1万件に達しているという。
「いい葬儀.com」にてコラムを連載する吉川美津子氏は、「実際のところお布施の目安はネット上でも掲載されており、同社紹介寺院のお布施が特段安いわけではないが、大手企業が発表したというインパクトは大きい」と話す。
本来お布施とは、僧侶の読経への対価ではなく、本尊への信仰の証として渡すものである。その認識の違いが寺院と遺族との温度差の原因になりがちだ。ただでさえ昨今では檀家離れが著しいため、寺院は変化を迫られている。
そういった時代だからこそ、寺院にしかできない試みを行うところが増えてきているようだ。「たとえば生前交流を活発に行ったり、寺自体をコミュニケーションスペースとして文化・教育活動を行うなど地域との結びつきを強めていこうとしている寺院もたくさん出てきています」(吉川氏)。
今では葬儀も多様化し、家族葬や直葬(通夜・葬儀がなく火葬のみ)が急速に増えているという。「縁起でもない」といわず、お布施の額や葬儀のスタイルを生前から考えておく必要があるかもしれない。
(PANA=写真)