従来の品種との混同を防ぐために2025年度から一本化

「カドミウムが懸念される地域の農業を軽視しているわけではなく、その地域の方々のご苦労はリスペクトしなければなりませんし、『あきたこまちR』が悪い品種だとも思っていません」

「あきたこまち」を作付けする30代の生産者はこう前置きしたうえで、複雑な胸中を打ち明けた。

「ただ、県による『あきたこまちR』への全面切り替えには納得できません。従来の『あきたこまち』を作付けするか、『R』を作付けするかは、農家側に選択権があるべきだと思っています」

県は2025年度から県内に供給する種子をすべて「あきたこまちR」に一本化するとしている。このことに関して、生産者の意見は一枚岩ではない。カドミウムの対策地域ではなく、かつコメを消費者や実需者に直売している農家ほど、従来と変わらない「あきたこまち」を栽培したいと望む傾向にある。

県は「あきたこまち」と「あきたこまちR」が遺伝的に極めて近く、見分けがつかないため、種もみのコンタミネーション(混入)を避けるためにも一本化する方針だ。「あきたこまち」を作付けしたい県内の生産者は、種もみを自分でとっておいて次期作に使う「自家採種」をするか、県外から買うことになる。

政治的活動の焚き付けに利用されたあきたこまちR

先の生産者は、消費者がどう反応するかに神経を尖らせている。

「県議会に5000件を超える『R』への要望書が提出されており、県外からも多数の声が届いているようです」

秋田県議会が今年度、「『あきたこまちR』への全量転換」をテーマに意見を募ったところ、5883件もの応募があった。うち5281件は県外から、18件が海外から寄せられている。今年度に意見を募ったほかのテーマだと、多くて11件なので、異様な数である。

「『あきたこまちR』に切り替えることで、これまでの『あきたこまち』と同様においしく、いま以上にカドミウムの少ない安全なコメを供給できるようになる。基準値がより厳しい国にも輸出できる商機が生まれるかもしれないので、悪いことはないはず。それなのに、不安をあおる商法なのか、方法なのか……」

秋田県の農業関係者はこう迷惑がる。

いったん活動の標的とされた以上、「あきたこまちR」に対するネガティブキャンペーンは、そう簡単に収束しないだろう。下火になりそうな政治的活動を盛り上げるべく、「あきたこまちR」は焚き付け材代わりにされてしまった。その結果、秋田県内の生産者の間にすら分断を生もうとしている。

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