あきたこまちの後継品種「あきたこまちR」が、社民党の福島みずほ党首をはじめとする国会議員らから「安全性が立証されていない」などと攻撃されている。これは「風評加害」ではないのか。ジャーナリストの山口亮子さんが取材した――。
秋田県の田んぼに実る稲穂
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県内の生産者に対する誹謗中傷も多い

秋田県を代表するコメ「あきたこまち」に変わり、同県が2025年度からの生産を予定している新品種「あきたこまちR」が切り替え前から風評被害にさらされている。

従来の「あきたこまち」に比べ、土壌に含まれる重金属のカドミウムをほとんど吸収しない特徴を持つあきたこまちRだが、育種の過程で放射線を使っていることを理由に、「危険だ」とする誤った認識が一部で広まっているのだ。

県に苦情が寄せられるだけでなく、県内の生産者に対する誹謗ひぼう中傷も多いという。背景には、いたずらに人々の恐怖心をあおる「不安商法」とも言える無責任な政治活動がある。

待望された「カドミウムを吸収しない稲」

カドミウムは自然界に広く存在する。人体に有害で、日本の四大公害病の一つ「イタイイタイ病」が富山県神通川流域で生じた原因ともなった。かつて鉱山があった地域などに、その濃度の高い土壌が存在する。

稲はカドミウムを吸収しやすく、日本人が食品から摂取するカドミウムの4~5割がコメに由来するとされる。国内におけるコメに含まれるカドミウムの基準値は、1キログラム当たり0.4ミリグラム(0.4ppm)以下と法律で定められている。これを超えると流通できない。

秋田県は鉱山が多かったこともあって、水田約1800haを「農用地土壌汚染対策地域(以下、対策地域)」に指定し、客土などによる対策を行っているほか、水田面積のおよそ2割に当たる1万8000haを、カドミウムが農産物に含まれないよう対策を講じる「生産防止対策地域」に設定している。

県は吸収を抑える栽培方法を生産者に指導するとともに、基準値を超えたコメを全量買い入れ、流通しないように処分してきた。

稲がカドミウムを吸収しないようにする対策として、別の土地から土を持ってくる「客土」や、カドミウムを吸収させる用の植物を植える「植物浄化技術(ファイトレメディエーション)」などがあるが、費用がかさんだり、作付けの時期が限定されるなどのデメリットが多く、本質的な解決策とは言えなかった。

「稲はカドミウムをよく吸うし、吸収しても生育上の障害は生じず、基準値を超えているかどうか見た目では分からない」(県の担当者)

つまり、土壌中の濃度を下げても、基準値超えのコメができてしまう可能性はぬぐえない。要は、カドミウムを吸収しにくい稲を作れるなら、それに越したことはない。それをかなえる品種が今回の「あきたこまちR」だった。