「放射線」という言葉に過剰反応する人たち

そんな待望の品種がいま、風評被害にさらされている。SNS上では「放射能米」というまるで事故米のような呼称まで現れている。

「もともと、カドミウムに関連して風評被害が起きるんじゃないかと心配していた。それがまさか、長年行われて有名な品種も生み出している放射線育種を今さら問題視するなんて。なぜなのか分からない」

県の担当者はこういぶかしむ。

県には2023年度だけで100件を超える苦情が寄せられている。なかには1時間近く長広舌をふるう人までいて、通常の業務に差し支えているという。

苦情を寄せる人には、新型コロナのワクチン接種に反対する「反ワクチン派」や、福島第一原発の処理水を海洋放出することへの反対派も多い。「ワクチンを打っていますか?」という質問から始まる電話すらある。

彼らが「あきたこまちR」に反対する根拠は、10年を超える育種の過程で一度だけ当てた放射線のみ。もちろん、「あきたこまちR」が人体に有害な放射線を発するはずもない。放射線育種を経ていることを根拠に健康被害を心配するのは、言いがかりに等しい。

県職員に「悪魔の証明」を求める

「あきたこまちR」に向けられているようなネガティブキャンペーンは、これまでさまざまな農作物に対して展開されてきた。遺伝子組み換えはもちろん、ゲノム編集された作物や、異なる親を掛け合わせて生み出すF1(雑種第一代)から、果ては農薬や化学肥料を使う慣行農法で作った農作物まで。対象は実に幅広いが、これらの作物の安全性を疑う科学的根拠は乏しい。

それでもキャンペーンを張る人々は、アトピーなどのアレルギーや発達障害、発がん性まで指摘し、危険性が全くないとは言い切れないとして反対する。「ないこと」を証明するのは難しい。そんな「悪魔の証明」を求められ、秋田県庁の職員は困惑している。