農水省は2兆3000億円弱の予算のうち、6000億円近くを水田に関連する事業に使っている。ジャーナリストの山口亮子さんは「北陸などの米どころほど農業産出額が低いにもかかわらず、多額の助成金が投入されている。コメに税金を投入する構造を変えなければ、日本の農業は立ちゆかなくなる」という――。
※本稿は、山口亮子『日本一の農業県はどこか 農業の通信簿』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
米どころ北陸の農業のコスパは悪い
財政のコストパフォーマンスでいうと、米どころほど成績が悪い。都道府県が1円の農業産出額を稼ぐために何円の予算を使っているかというランキングにおいてである。
最下位から順に石川、福井、富山と北陸3県が独占している(図表1)。いずれもコメの占める割合が高く、石川は47.1%、福井は57.4%、富山は64.8%という感じだ。全国平均の15.5%を大きく上回る。
2021年の農業産出額を農業関連予算で割った結果は、最下位の石川で1円の予算につき1.6円の農業産出額しかあげていない。
新潟は36位で富山、石川、福井の北陸3県に比べれば順位が上がるものの、全国平均の5.7円を大幅に下回る3.3円にとどまる。17年までさかのぼっても北陸3県は一貫して最下位集団に属し、新潟も30位台の後半以降をさまよっていた。
過去の栄光にあやかった石川のブランド米
最下位の石川といえば、プロレスラーの馳浩氏が知事を務める。22年に就任して以来、秋になると石川県産米の需要を拡大すべく、自ら売り込みに立つ。
品種がさまざまあるなかで、一押しは、県がブランド米として9年がかりで開発した「ひゃくまん穀」。その名の由来は「加賀百万石」にある。加賀藩は、江戸時代に藩としては最大級の100万石を超える石高を誇ったことから、加賀百万石は藩の呼称としても使われる。コメの新品種に冠したのは、そんな過去の栄光にあやかろうとした感が強い。
石高は、その土地における年間のコメの生産高を示す。石高が多いほど豊かになれたのは、過去の話だ。後ほど述べるように、コメでは最強の銘柄の一つ、「新潟県産コシヒカリ」を擁する新潟すら、農業産出額は右肩下がりを続ける。