給食の献立はどのように決められているのか。管理栄養士の松丸奨さんは「自治体が定めたルールに沿って献立表は作られている。私が働く文京区では、10日間の主食は、ごはん6.5回、パン2回、麺1.5回という回数が決められている」という――。(第1回)

※本稿は、松丸奨『給食の謎』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

献立を作る管理栄養士の知られざる苦労

まずは献立計画を立てます。これはもっとも楽しい作業と言っても過言ではありません。「○月○日はわかめごはんにしよう。次の日は揚げパンにしよう。その次はみそラーメンがいいかな」

このように献立のタイトルだけを挙げて、栄養士の頭のなかにある献立案を書き出していく作業です。いわば真っ白なキャンバスに、自由に理想を描くようなもの。栄養士の醍醐味だいごみと言えます。

献立表は1カ月単位での配布が通例です。しかし、献立計画自体は1学期ぶんをまとめて作ってしまうのがもっとも効率のよい方法だと私は考えています。

なぜなら、1カ月という期間内だけでバランスが取れるように作成していると、翌月にも似たような献立を配置してしまうことがあるからです。

たとえばトマト味のパスタを9月末に出していたら、10月のパスタではクリーム系やオイル系にしたいところです。あるいはトマト味のメニューはしばらく間を開けたほうがよいでしょう。さらに言うとハヤシライスも、トマト味とよく似た味付けになるので避けたい……と、栄養士はこのように考えて献立を作っています。

1カ月ぶんだけの献立計画を作ってしまうと、同じ月のなかではこうした重複ミスを防げても、翌月のことまで気が回らず、似た味付けの献立が続いてしまうことがあるのです。

味付けだけでなく調理法にも注意が必要です。月の切り替わりが週の真んなかだった際に、うっかり「月曜日に揚げ物、金曜日も揚げ物」なんて羽目になることも……。いくら月をまたいでいるとはいえ、子どもたちに「また揚げ物?」と感じさせてしまいます。献立立案者としては敗北感を味わう瞬間です。

学校給食の試食会、東京都府中市
学校給食の試食会、東京都府中市(写真=Osamu Iwasaki/ CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

1学期分のメニューは3日で完成する

栄養価などの充足率は1カ月ぶんで判断すればよいので、月末と翌月の初めで献立が似通っても、大きな問題は生じにくいでしょう。

しかし食の楽しみの点で、同じような調理法を連発するのは望ましくありません。このようなうっかりミスを避けるためにも、献立計画は学期ごとに立てるのが理想だと考えて、私はずっとそうしています。

ただ、同業の方が集まる講演で「私は1学期ぶんの献立をまとめて作成している」と話すと、「私もそうです」という方が半分、「1カ月ぶんずつ作成している」という方が半分といったところです。栄養士それぞれの流儀があるようです。

この作業はとても楽しいので、1学期ぶんの献立計画が、早い時は3、4日で完成します。