第100回の記念大会となる箱根駅伝の予選会の特別枠に助けられすべり込みで出場を決めた東京農業大学。通算70回出場の古豪には、約50年前にとてつもないヒーローがいた。大学卒業後は目指した五輪出場はかなわなかったが、父親から引き継いだ牧場経営で大成功を収めた。東農大OBで元箱根ランナーのスポーツライター・酒井政人さんが取材した――。

箱根駅伝の古豪・東農大の元エース71歳の華麗なる経歴

2024年正月に開催される第100回箱根駅伝に著者の母校でもある東京農業大学が10年ぶりに出場を果たす。通算70回目の出場となる古豪の復活に大学関係者は大いに沸いている。しかし、そんな祝福ムードの中、ひときわ冷静なOBもいる。

服部誠さん
服部誠さん(筆者撮影)

服部誠さん(71)。第50回大会(1974年)で“伝説の12人抜き”を演じて、同大に初の往路優勝をもたらした。瀬古利彦が現れる前の箱根路のヒーローだったというとわかりやすいかもしれない。

10年ぶりに出場する母校についてはこう語った。

「まずはおめでとう! だね。まわりのOBは楽観的で、みんな喜んでいる。だけど今回は薄っぺらい気がするな。自分らのときは2年後、3年後が見えた。今回は見えない。このままだと第101回大会の出場は厳しいと思う」

箱根駅伝本選への出場枠10大学をかけた今秋の予選会で日本人トップを飾った前田和摩というスーパールーキーはいるが、チームの主力は10000m28分10秒台のタイムを持つ高槻芳照と並木寧音ら4年生。チームは予選会を11位通過で、記念大会の増枠に救われたかたちだった。4年生が卒業すると戦力はかなりダウンする。それを危惧しているからこそ辛口だったわけだ。

「16人のエントリーで4年生が6人も入っている。それと来季の補強もあまりできていない。ただ、ルーキーの前田は本物だよ。性格もいいし、高校時代の環境もよかった。頭良さそうだよな。日の丸つけて走る選手になると思うよ!」

古希を迎えたものの、眼光は鋭く、背筋もぴんとしている服部さんは、ハイブランドのウエアに身を包み、黒塗りのベントレーや白のハマー・ピックアップに颯爽と乗っている。実にカッコいいのだ。現在は本業の傍ら、総監督という立場で母校をサポートしているとはいえ、陸上界の一線を退き、50年近い月日が経つ。

ベントレー
写真=iStock.com/Wirestock
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