小学校で「暴れる子」が増えている。心理学博士の榎本博明さんは「ひとつの原因は、親や教師が子どもを叱れなくなっていることだろう。このままでは子どもの自己コントロール力は低下する一方だ」という――。(第2回)

※本稿は、榎本博明『勉強ができる子は何が違うのか』(ちくまプリマー新書)の一部を再編集したものです。

リビングルームで母親から励まされた子ども
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

小学生の暴力行為が急増している

忍耐力や協調性が十分に身についていないと、課題の達成に向けて粘り強く頑張り続けたり、周囲の仲間たちとうまくかかわったりすることができないため、学校生活への適応に苦労することになりがちである。そのイライラが攻撃的な言動につながったりする。

嫌なことがあれば気持ちが沈んだり、腹が立ったりするのはだれにもあることだが、そうした負の感情をうまくコントロールできないとき、気持ちが沈んだまま「心が折れた」といって立ち直れなくなったり、堪えることができずにキレたりする。

小学校に入った途端に適応できずに問題を引き起こす生徒が非常に多くなっているが、小学生の暴力行為が急増しているところにも、そうした衝動を和らげるように自分の気持ちを適切にコントロールする力の未発達があらわれている。

文部科学省による2019年度の調査データをみると、教育機関における児童・生徒の暴力行為の発生件数は、7万8787件であった。その内訳をみると、小学校4万3614件、中学校2万8518件、高校6655件となっており、小学校の発生件数が飛び抜けて多いことがわかる。

小学校の発生件数は、中学校の1.5倍、高校の6.5倍となっている(2020年度以降は新型コロナの流行により通学者数の減少という特殊要因があるため、ここでは2019年度までのデータを取り上げる)。