多くの人が「子どもを尊重する親」を目指している

「学校でよい成績をとる」ことをどれだけ期待するかという問いについても、「強く期待する」という親は、フランスで70.1%、アメリカで72.7%なのに対して、日本では11.9%と、これまた著しく低い。

欧米の親は子どもに強く命じたり強い期待を示したりするのに対して、日本の親には子どもに無理強いするのはよくない、子どもの自由にさせてあげたいといった思いがあるようだ。それが子どものためと思っているのかもしれないが、実際は子どもを将来苦しめることになりかねない。なぜなら厳しい状況に耐えたり、長期的な目標のために目の前の欲求を我慢したりできるように、自分の気持ちをコントロールする力が鍛えられないからだ。

リビングで息子に話す母
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

今の20代の若者がしつけを受け始めた2001年度に行われた意識調査の結果をみると、「どういう親でありたいか」という問いに対する回答で、最も比率が高かったのは「何でも話し合える友だちのような母親」で83.2%、2位が「できるだけ子どもの自由を尊重する父親」で82.8%、3位が「できるだけ子どもの自由を尊重する母親」で79.2%となっている。

ほとんどの親が子どもの自由を尊重する親でありたいとしており、そこには子どもが社会の荒波を乗り越えていけるように鍛え上げてやらなければといった思いがまったくみられない。

フランスはしつけが厳しいことが自慢

それに対して欧米の親は、子どもに対して強大な権力者として君臨し、子どもの心を強く鍛えようという強い意思をもっているように思われる。

たとえば、フランス人の子育てを紹介している『フランスの子どもは夜泣きをしない』(集英社)によれば、フランスの親にとってはしつけが厳しいことが自慢であり、親は子どもに対して絶対的な権力者でなければならないと考えているという。そして、自己コントロールができる子に育てようとしていることが、つぎのような記述から窺える。

「フランス人の親は、子どもにフラストレーションを与えるダメージを心配しない。反対に、フラストレーションに対処できなければ、子どもがダメージをこうむると考えている。フラストレーションに耐えることを、人生の核となるスキルだと見なしているのだ」
「フランス人の専門家や親は、子どもは『ノー』の言葉を聞くことで、自分の欲望という暴君から救われると考えている」

このように厳しく育てられることで、世の中は自分中心に動いているのではないことを体得し、欲求不満にも耐えられるようになり、思い通りにならない現実をしぶとく生きることができるようになると考えられる。