※本稿は、春増翔太『ルポ 歌舞伎町の路上売春』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。記事に登場するカタカナ表記の名前は仮名です。
「18歳未満だと風俗店で働けないから」17歳で路上に立った
路上売春をする女性には10代も珍しくない。客待ちのノウハウを語ってくれたサユリも、その一人だ。彼女は17歳で立ち始めた。
サユリが初めて「売り」をしたのは16歳のときだった。地元は北関東の地方都市。中学を卒業後、彼女は吉野家、ドン・キホーテ、マクドナルドでアルバイトをし、家にも金を入れた。「でも時給は800円くらいで、せいぜい月に8万円くらいしか稼げない。家に金を入れると、ほとんど残らなかった」。ある日、金をくれるという男性をツイッター(現X)で探してみた。相手はすぐに見つかった。
「言われた通り東京駅まで行って、その男の車に乗せられた。結局、どこかの駐車場に停めた車の中で手でやったよ。45歳くらいの人。私もまだ処女だったし、気持ち悪かった」
それでも受け取った1万円は大きかった。
「『こんなことしてちゃダメだ』って思って、やっぱり売りはやめてアルバイト続けたの。でも1日働いて6000円とかでしょ。もう無理なの。1、2時間で1万円っていうのを知っちゃったから」
家族との関係は悪く、ほどなくマッチングアプリで知り合った男性を頼って上京し、歌舞伎町で売春を始めた。路上に立ったのは、18歳未満だと風俗店で働けないからだ。
「若い子らは平気で1万円以下で(ホテルに)行っちゃうからね。夜のホテル代が出ればいいって子もいるし、ナマでもイチゴー(1万5000円)とか。それで、全体の値段が前より下がってる。前はだいたい2(万円)が平均だったけど、今はもう1とか1.5じゃない?」とサユリは言う。
「トー横キッズ」も来て路上売春はより安くカジュアル化した
この街に来て4年がたったとはいえ、まだ21歳の彼女が「若い子らは」と言うのは変な気もするが、「相場」は下がり気味だと話す女性は多い。ここ数年、数百メートル離れたトー横広場から、その日の宿代を稼ぎたい「トー横キッズ」の女の子が流れて来るようになって、10代は増えている。路上売春は、より安く、よりカジュアル化している。
彼女たちの多くは、自分たちの行為が違法だと知っている。捕まった経験のある子もいる。だから、そのリスクを常に意識しながら立っている。それが理由で公的支援にアクセスしようとしないケースもあるという。
警察は頻繁にパトロールをしている。パトカーは1時間に何度も大久保公園の周囲を回っているし、制服姿の警察官が2人組で巡回している姿もよく見かけた。買春客と見分けがつかないが、私服刑事らも目を光らせていて、摘発もある。