素人女性が体を売るため客待ちをする歌舞伎町の有名スポットでは、2023年、女性の数が急増した。女性たちに直接会って取材をした毎日新聞社会部の春増翔太記者は「体を売る女性は10代も珍しくない。路上売春は、より安く、よりカジュアル化している」という――。

※本稿は、春増翔太『ルポ 歌舞伎町の路上売春』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。記事に登場するカタカナ表記の名前は仮名です。

東京・新宿歌舞伎町の「ゴジラロード」
写真=iStock.com/Kindamorphic
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「18歳未満だと風俗店で働けないから」17歳で路上に立った

路上売春をする女性には10代も珍しくない。客待ちのノウハウを語ってくれたサユリも、その一人だ。彼女は17歳で立ち始めた。

サユリが初めて「売り」をしたのは16歳のときだった。地元は北関東の地方都市。中学を卒業後、彼女は吉野家、ドン・キホーテ、マクドナルドでアルバイトをし、家にも金を入れた。「でも時給は800円くらいで、せいぜい月に8万円くらいしか稼げない。家に金を入れると、ほとんど残らなかった」。ある日、金をくれるという男性をツイッター(現X)で探してみた。相手はすぐに見つかった。

「言われた通り東京駅まで行って、その男の車に乗せられた。結局、どこかの駐車場に停めた車の中で手でやったよ。45歳くらいの人。私もまだ処女だったし、気持ち悪かった」

それでも受け取った1万円は大きかった。

「『こんなことしてちゃダメだ』って思って、やっぱり売りはやめてアルバイト続けたの。でも1日働いて6000円とかでしょ。もう無理なの。1、2時間で1万円っていうのを知っちゃったから」

家族との関係は悪く、ほどなくマッチングアプリで知り合った男性を頼って上京し、歌舞伎町で売春を始めた。路上に立ったのは、18歳未満だと風俗店で働けないからだ。

「若い子らは平気で1万円以下で(ホテルに)行っちゃうからね。夜のホテル代が出ればいいって子もいるし、ナマでもイチゴー(1万5000円)とか。それで、全体の値段が前より下がってる。前はだいたい2(万円)が平均だったけど、今はもう1とか1.5じゃない?」とサユリは言う。

「トー横キッズ」も来て路上売春はより安くカジュアル化した

この街に来て4年がたったとはいえ、まだ21歳の彼女が「若い子らは」と言うのは変な気もするが、「相場」は下がり気味だと話す女性は多い。ここ数年、数百メートル離れたトー横広場から、その日の宿代を稼ぎたい「トー横キッズ」の女の子が流れて来るようになって、10代は増えている。路上売春は、より安く、よりカジュアル化している。

彼女たちの多くは、自分たちの行為が違法だと知っている。捕まった経験のある子もいる。だから、そのリスクを常に意識しながら立っている。それが理由で公的支援にアクセスしようとしないケースもあるという。

警察は頻繁にパトロールをしている。パトカーは1時間に何度も大久保公園の周囲を回っているし、制服姿の警察官が2人組で巡回している姿もよく見かけた。買春客と見分けがつかないが、私服刑事らも目を光らせていて、摘発もある。