自分の動画がネットで公開され、憤る女性たち

勝手に素顔を撮られた動画がネット上にアップされていると知り、憤っている女の子とは何人も会った。ある子は友達から「あんた映ってるよ」と言われて気づき、(「NPO法人 レスキュー・ハブ」を運営する)坂本新さんが開いている相談室に駆け込んだ。日中は事務職のアルバイトをしているから、「職場にばれたらどうするの」と怒っていた。その動画を見せてもらうと、モザイク処理もなく、彼女を知る人が見ればすぐに分かると思える映像だった。彼女は、「警察は女の子じゃなくて、ああいうやつを捕まえなよ」と何度も言った。

警察もこうした状況を把握しているが、明確な違法性がなければ、公道上の撮影を取り締まるのは難しい。誰にも肖像権はあるが、その侵害に刑事罰を科す法律はない。憤った女の子たちから、「なんで警察はなんにもしてくれないわけ?」とよく聞かれるが、取り締まる法律がなければ警察は動けない。

撮影され投稿されるという「肖像権」問題では警察は動けない

春増翔太『ルポ 歌舞伎町の路上売春』(ちくま新書)
春増翔太『ルポ 歌舞伎町の路上売春』(ちくま新書)

「勝手に撮られたんだけど」と、撮影者を捕まえた女性が、近くを通りかかった警察官を呼び止めたり、近くの交番に訴え出たりすることもしばしばだ。「トラブルになるから」と、撮影者に注意する警察官もいたが、そのやり取りまで撮影されてしまいかねない。暴行罪や脅迫罪に当たるような言動があれば別だが、撮影をめぐるトラブルだけでは、「気をつけて下さい」と声をかけるのが関の山だ。

路上で女性と話し込んでいた私を不審に思って話しかけてきたパトロール中の制服警官に記者だと名乗り、その流れで雑談をしたことが何度かある。ある日、男たちによる無断撮影の話を持ち出すと、「(勝手に撮影する)連中をどうにかしたいという気持ちは個人的にはあるけど、肖像権は民事の問題。我々は民事不介入だからね」と言っていた。

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