2024年の箱根駅伝は第100回の記念大会。例年以上の盛り上がりと高視聴率が予想される。スポーツライターの酒井政人さんは、「主催・運営する関東学連では資金や財務の情報は非公開。日本テレビが支払う放映権料が複数年で数十億円になるなど巨額マネーが集められているが、どこにどのように配分されるのか、SNSを中心に不透明さが指摘されている」という――。

※本稿は、酒井政人『箱根駅伝は誰のものか「国民的行事」の現在地』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

「お金」の問題――収益は一体どこに⁉

箱根駅伝は関東学連が主催・運営するが、任意団体のため、資金や財務の情報は一切公開されていない。そのため、集まった資金がどこにどのように配分されるのか、SNSを中心に不透明さが指摘されてきた。

筆者が関係者に取材したところ、正確な額はわからなかったものの、日本テレビが関東学連に支払う放映権料は複数年契約で数十億円になるようだ。特別協賛のサッポロホールディングスはテレビ中継が始まった頃(当時はサッポロビール)からの筆頭スポンサーで、2024年開催の第100回大会で38年連続。スポンサー料は1回で8億円とも10億円ともいわれている。

協賛はミズノ、トヨタ自動車、セコム、敷島製パンと業界大手が並ぶ。ほかにもNTTドコモなどがスポンサーとして名を連ねている。イメージ抜群の箱根駅伝は各企業にとって広告価値が非常に高い。各スポンサーの広告効果は、60億円相当といわれているほどだ。

なおテレビCMだけでなく、トヨタ自動車は運営車両を提供しドライバーを派遣。セコムは警備を担当して、ミズノは関連グッズを販売している。

読売グループが巨大な利益を得ているはずだが、主催する関東学連はというと、実はそれほど潤ってはいないようだ。「視察」という名のもと世界選手権の観戦ツアーを組むなど、選手たちが知ったら「なぜ?」と感じるような支出もあるが、選手たちに還元している部分も少なくない。学生トップクラス選手の海外遠征や、国内レースでも一定タイムを切った場合、その費用(交通宿泊費)を補助しているのだ。

例年11月下旬に開催している関東学連1万m記録挑戦競技会は昨年度の場合、日本選手権申込資格記録(28分16秒)の突破者、指定タイム突破者(29分00秒、29分20秒)には奨学金を授与している。また全日本大学駅伝の出場校にも強化費が支給されている。

支出のなかで一番大きいのが箱根駅伝の運営管理費だ。217.1kmもの距離で行われるため、20〜30数m置きに走路員を配置するとすれば、往路だけで4000〜5000近い人員が必要になる。加えて、スタートとゴール、各中継所はさらに警備を強化しないといけない。2013年のボストンマラソンで爆発事件が勃発したこともあり、国内レースもセキュリティーを強化しており、その費用がかさんでいるのだ。

警視庁と神奈川県警合わせて約2000人の警察官に加えて、警備会社(セコム)のスタッフを全国から400人ほど動員。ほかにも約1800人の学生補助員、それから東京陸協、神奈川陸協の審判員約2000人も箱根駅伝を支えている。

学生補助員には交通費と食事代が支給されている。もちろん警備員と審判員には報酬も必要だ。他にも中継所付近の商店に関東学連のスタッフが手土産を持参して挨拶まわりをするなど、これだけのイベントを実施するにはお金だけでなく、手間がかかっている。

関東学連のある関係者は、「放映権は確かに莫大ですけど、大会運営費も莫大なんです。実際には放映権分を全部使っているような状況なんですよ。箱根駅伝グッズの収益が入ってくるので、それくらい分が黒字という感じです」と話している。