箱根駅伝に毎年のように出場している大学の陸上部監督の年収はどれぐらいなのか。スポーツライターの生島淳さんは「日本の大学はスポーツに予算を割くカルチャーがない。本来は3000万円~5000万円の年俸が支払われてもいいはずだ」という――。

※本稿は、生島淳『箱根駅伝に魅せられて』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

札束の上に置かれたラグビーボール
写真=iStock.com/spxChrome
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アメリカの大学スポーツの指導者の驚きの年俸

ナマっぽい話、いや、ナマな話を書いてみる。監督たちの待遇についてである。

いまや日本の学生スポーツイベントのなかで、箱根駅伝ほど影響力を持っている大会はなく、それだけ監督、学生たちは学校に貢献していることになる。

これはあくまで私の個人的な意見だが、長距離の指導を担当する大学の監督たちは、年俸数千万円に値する仕事をしていると思う。なぜなら、アメリカのカレッジスポーツのヘッドコーチの年俸がハンパないことをニュースで見ているからだ。ここでは人気のフットボールとバスケットボールのヘッドコーチの年俸のトップ3を紹介したい。まずはフットボールから(分かりやすいように1ドル100円として換算。2021年に発表された数字)。

1 ニック・セイバン(アラバマ大学)…………10億9800万円
2 デイボ・スウィーニー(クレムソン大学)…10億5400万円
3 カービー・スマート(ジョージア大学)……10億2300万円

アメフト部の成績によって寄付金の額が変わる

読者のみなさんは、この数字に驚かれるのではないだろうか。とんでもない数字だが、フットボール部の大学への貢献度を考えると、妥当だと思う。志願者数の増加、なにより大学への寄付に対する貢献が大きい。

アメリカではフットボール部の成績によって寄付金の額が変わってくるといわれており、大学経営陣にとって、優秀なヘッドコーチを招聘しょうへいするのは重要な問題である。特にアラバマ、ジョージア、ルイジアナの南東部の各州にとってカレッジフットボールはアイデンティティそのものだ(レッドステート、共和党の支持層が多い地域でもある)。

そのあたりの事情は、想田和弘監督のミシガン大学での観察映画『ザ・ビッグハウス』にとても詳しい。ミシガン・スタジアムは収容人員10万人以上のまさにビッグハウスだが、試合開催日に大口寄付者向けの昼食会が開かれ、学長が寄付者を前に素晴らしいスピーチをする。

「あなた方の支援が、ミシガン大学の学生生活の充実につながり、若者にチャンスを与えることになるのです」