少なくとも年収1000万円が妥当

また、大学当局は関係なく、陸上競技部が指導者を招聘するケースもある。OB会が人件費を負担したり、あるいはコーチが所属する企業から「出向」という扱いで、企業にお願いするパターンもある(大学ラグビーではわりと多い契約パターンだ。大学側に資金があまりないのだ)。

今後、指導者の待遇はどうなっていくだろうか。陸上、ラグビーの取材などをしていても、基本的には1000万円が収入の目安となると感じる。いまや長距離ブロックの指導は監督一人では無理で、中大のように複数のコーチをそろえ、選手たちの走力によって「セミ・パーソナル」的な指導ができる体制を整えていくことを考えると、3000万円から5000万円ほどの人件費を捻出していかなければならない。それだけの予算を投下している大学は限られる。そもそもスポーツに予算を割くカルチャーがない。

予算を投下しないと人材の流動性も確保できない

生島淳『箱根駅伝に魅せられて』(KADOKAWA)
生島淳『箱根駅伝に魅せられて』(KADOKAWA)

大学当局が駅伝の存在価値を認め、真っ当に人件費を予算項目として計上すれば、市場が確立し、人材の流動性が確保されていくと思う。現在も、早稲田の監督を務めていた渡辺康幸監督が住友電工で監督を務めたり、日体大を優勝に導いた別府健至監督がロジスティードの指導を担当していたりと、このところ大学から実業団へと場所を移す監督も増えてきた。

また、仙台育英高校の監督として吉居大和らを育てた真名子圭監督が、2022年に大東文化大学の監督に就任し、4年ぶりに箱根駅伝出場を決めるなど、高校の指導者が大学で指導するケースも目立ってきた。

向こう10年、指導者の待遇が改善すれば、より大学長距離界は活況を呈すると思う。アメリカの大学レベルは望むべくもないが、1000万円以上の収入が保証され、なおかつ長期契約が結べれば、腰を据えてチーム作りが行えるからである。気づいている学校は、あるにはあるのだが。

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