年間予算500億円の東北大に100億円を配分
大学の研究力を高めるために政府が創設した10兆円規模の大学ファンドの初の支援対象候補に東北大が選ばれた。昨年12月から公募を開始し、国立、私立の10大学が手を挙げた。最終候補に東大、京大、東北大の3校が残ったが、なぜ東大、京大が落選し、東北大が選ばれたのか。
ここ20年にわたって日本の研究力は低下してきた。挽回の切り札として政府が打ち出したのが、この大学ファンドだ。
政府の出資で10兆円規模のファンドを作り、その運用益を使って、文部科学省が「国際卓越研究大学」と認定した数校の大学を支援する。
政府の計画では、約3~約4%の運用益を目指し、2024年度から年間3000億円を上限に国際卓越研究大学に配分する。配分期間は最長で25年間続く。
今回選ばれた東北大は、その候補第1号というわけだ。
東北大には、2024年度に100億円程度の資金が配分される見通しだ。この資金を研究や若手研究者育成に充てる。東北大の収入予算は1458億円(2021年度)。このうち国から東北大に配分されている予算(運営費交付金)は458億円で、これが100億円増えることを考えると、影響は非常に大きい。
なぜ東大や京大は外されたのか
政府は国際卓越研究大学の認定は、数校に限る方針だ。
2000年代に入ってから政府は、経済活性化につながると思われる研究分野に手厚く予算を配分する「選択と集中」を続けてきた。国際卓越研究大学は、その大学版といえるだろう。
ただ、実際にどれぐらいの規模の資金が国際卓越研究大学に配分されるかは、運用益次第だ。ファンドを運用するJST(科学技術振興機構=文部科学省が所管する国立研究開発法人)は2022年度の運用で604億円の赤字を出しており、苦しいスタートとなった。
次回の公募について文科省は、「来年度中に開始したい」としつつも、「運用状況を勘案し、段階的に行う」と慎重な姿勢も見せる。
世間の関心を集めたのは、なぜ東北大なのかということだ。
最終候補の3校はトップクラスの大学であり、どこが選ばれてもおかしくないが、多くの人は、東大あるいは京大が選ばれると思っていたのではないか。
英国企業「クアクアレリ・シモンズ」の最新版世界大学ランキングでも、東大28位、京大46位、東北大は113位と差が開いている。
逆転現象が起きた理由のひとつは、文科省など政府の希望に沿った改革を目指しているかどうかだ。
文科省は選定にあたって、経済界、学術界、外国人の大学関係者など10人の有識者からなる「アドバイザリーボード」を設け、審査をした。アドバイザリーボードの報告書を見ると、なぜ東大、京大が落選したか、理由が浮かび上がってくる。