海外大学を真似ても成功するはずがない

ただ大きな違いがある。欧米の大学の多額のファンドは、産学連携や寄付などによる大学自身のお金が原資になっている。一方、日本は巨額の税金が原資という政府丸抱えだ。

どういう制度にするかを議論するために、政府は、まず内閣府に有識者会議を設けた。会議では、海外の大学学長経験者や関係者のヒアリングを行ったが、日本国内の大学については東大、京大、東北大、大阪大の学長経験者や、産学官からなる大学改革支援組織のヒアリングですませた。

国際卓越大学の審査を行ったアドバイザリーボードのメンバー10人のうち半数は、この議論をした内閣府の有識者会議のメンバーだ。大学に大きな変革を求め、これからの日本の将来を決めるものだけに、審査する側の多様性や、大学の現場の声をもっと重視すべきではなかったか。

東京大学キャンパス内
写真=iStock.com/mizoula
※写真はイメージです

ファンドを運営しているJST(科学技術振興機構)が初年度の運用で600億円を超える赤字を出したことも暗雲を投げかけている。

文科省は9月にJST法の施行令を改正した。これまでファンドの運用方法は株や債券だったが、新たに「金利先物」「上場投資信託オプション」「株価指数先物オプション」「金利先物オプション」など10項目を加えた。

文科省はその理由として、「大学ファンドは元本の約9割が負債である長期借入金(財政融資資金)であり、さらに、毎年度の損益を確定させていかなければならないという性格がある」「よりきめ細かに損失のリスクを低減した資金運用を可能にするため」など、と説明する。

だが、不確実で不安定さを伴う資金調達法であることに変わりはない。研究支援、若手育成にあまりふさわしいとは思えない。

また同じ失敗を繰り返すのか

これまでも、政府が税金を投じて、民間も走らせ、結果、頓挫してしまった例は多々ある。

最近の例でいえば、三菱重工業を説き伏せて、国産初のジェット旅客機MSJ(旧名MRJ)を開発したが、開始15年後の今春に頓挫した。三菱重工は当初予定の1500億円を大幅に超える1兆円規模を投じたと見られている。

民間にも資金を出資させて官民ファンドをたくさん作ったが、赤字を流し続けていたり、きちんと機能していなかったりするところも目立つ。
ビジネス感覚に乏しい官主導の問題点を露呈しているのではないか。

大学ファンドについても、運用益を約3%~約4%と見積もったことに対して、経済関係者からは「甘すぎる」と批判が出ている。

研究力の低下からの脱却は日本にとって喫緊の課題である。これまで通りの大学の在り方では、新しい時代にそぐわないこともある。ただ、甘い見通しと希望的観測が先行して大学を巻き込んでの失敗となると、日本の将来を潰しかねない。

大学の組織改革や巨費のファンドだけで、研究力や大学の国際競争力向上につながるわけではない。研究に必要な予算をきちんと投じて成果を上げるためには、現場の意見をもっと聞きながら着実に進める必要があるだろう。

税金を使う以上、国民への説明責任や透明性確保という問題があることも忘れてはならない。

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