豊富な経験や高度なスキルを持つ人は、採用面接に自信を持って臨むだろう。ところが、転職エージェントの森本千賀子さんは「自分のキャリアを全面的にアピールすることが、逆効果になることがある。人事担当者が『内定確実』と思った応募者でも、最終面接などで落とされることがある」という――。
不採用と書かれた木製ブロックを手に持つ人
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「経験・スキルは申し分なし」でも不採用に

書類選考では「経験・スキルは申し分なし」と高く評価され、スムーズに通過。ところが最終面接まで進んで採用を見送られてしまうケースがあります。

しかも、不採用の理由は「面接の場でうまくアピールできなかったから」ではありません。事前にしっかりと面接対策をして、経験や実績をしっかりと伝えたものの、そのアピールが裏目に出て不採用になることがあるのです。

3つのパターンをご紹介します。

①「完成されていて、伸びしろが期待できない」

管理部門スペシャリストのAさん(30代)は、あるベンチャー企業に応募し、面接で自分の経験を自信満々にアピールしました。

「私はこれまで○○、○○、○○の経験を積んできました。特に○○、○○のスキルには自信があります。○○の取り組みでは○○という成果を上げ、社長賞も受賞しました。これらの経験・スキルを御社で生かしたいと思います」

採用担当者は「すばらしい。まさに当社が必要としているご経験です」と称賛しつつ、次の質問を投げかけました。

「では、当社でどんなことをしたいですか。何か目標としていることはありますか」

その問いに、Aさんは黙り込んでしまいました。沈黙の後、ようやく絞り出した答えは、

「そうですね……私の経験を生かしてお役に立てれば、と思っています……」

結果的に、Aさんは採用を見送られてしまいました。採用担当者はAさんの経験・スキルは高く評価しつつ、「完成されてしまっている感じで、今後の伸びしろを感じられない」と判断したのです。

Aさんのようなケースは、実は少なくありません。ご自身のキャリアに自信をお持ちの方ほど、「これまでの経験」「今持っているスキル」を全面に出してアピールしがちです。もちろん、企業側も経験を生かして貢献してもらえることに期待を寄せますが、同時に「さらに高い目標を目指して、ともに成長し続けられる人材を迎えたい」と考えているのです。