転職したときのオファー年収から格差が発生
【山本】まず日本全体の男女賃金格差は、男性労働者の給与水準を100としたときに、女性労働者は75.2の割合であると言われています。
【工藤】そんな男女間の賃金格差を解消するための取り組みとして、2022年に女性活躍推進法が改正され、「男女間賃金格差の開示」が企業の義務となりました。メルカリさんの開示アクションもその流れの中で行ったものですよね。趙さん、メルカリさんの男女間賃金格差はどうなっていますか?
【趙】メルカリでは平均賃金に男女で37.5%の格差がありました。要因ごとの数値は開示していないのですが、ギャップの要因を大きく分けると、客観的に説明ができる要因と、説明できない要因とに分けられました。
これは両方の要因を見極めるのが大事で、なぜかと言えば、要因によって打つ手が違ってきますよね。
まず説明出来る要因は主に二つあります。まずはグレード(等級)の分布の差です。平たく言うと、グレードが上がるほど、男性比率が高まることがわかりました。二つ目に職種の差です。メルカリでは職種ごとに賃金が違いますので、賃金の高い職種に男性が多かった。
【工藤】ここまでが「説明できる」要因ですね。
【趙】はい。ですが同じ職種、同じグレードでも約7%の賃金格差があることがわかりました。これは「説明できない」要因です。
なぜこうなっているのか。検証したところ、入社時のオファー年収の差であることがわかりました。メルカリは中途採用が多く、95%を占めるのですが、入社時点のオファー年収自体のギャップが、男女で約9%あることがわかりました。
メルカリは開示義務以上のデータを分析・公表
【工藤】法律で決められた開示義務は、
・男性労働者の平均賃金に対する、女性労働者の平均賃金を割合(パーセント)で示す
・全労働者・正規雇用労働者・非正規雇用労働者の区分で公表すること
の2点です。
そこからさらに、メルカリさんは、重回帰分析という統計手法を使って、同じ役割・等級・職種の間に格差が生じていないか調べている。これが「説明できない」要因の分析へとつながっていきます。
ここまで詳しく分析するのは、日本企業ではまだ珍しいと思います。データサイエンスの専門家の方からも高い評価を受けていたように思いました。なぜこのような取り組みをしようと思ったのでしょう。