バイトで月収50万円も夢じゃない
物価上昇のアメリカで、賃金の上昇傾向を象徴する事例が続々と登場している。物流企業のUPSでは、配送ドライバーの標準的な年収が今後5年間で大幅に引き上げられる。一方、郊外のユタ州でも公立小学校の新任教師が年収890万円で募集されるなど、必要とされる人材にふさわしい対価を支払うべきだとの意識が高まっている。
カリフォルニア州では9月14日、ファストフード業界の最低賃金を時給20ドル(約2890円、レートは9月26日現在、以下同)に引き上げる法案が州議会を通過した。州内で業界を問わず適用されている現行の15.50ドル(約2310円)から、約30%の増額となる。
月収換算では、時給20ドルで1日8時間・月20日働くと仮定した場合、カリフォルニア州バーガー業界の新たな月々の収入は最低でも3200ドル(約47万6000円)からとなる。米CBSニュースによると、州内のファストフード労働者は約50万人と見積もられており、発効する2024年4月1日以降、その大半が昇給となる見通しだ。
特定の業界を対象に最低賃金が設定されることは異例だが、ファストフード業界を皮切りに他業種への波及が期待されている。一方、インフレの促進材料になるのではないかと懸念もあるほか、店側は財務への打撃を心配している。法案にギャビン・ニューサム州知事が9月28日に署名し、成立した。
一方、日本の厚生労働省が発表している地域別最低賃金は、最高の東京都でも1113円、全国加重平均額で1004円となっている。同じ1時間働いた場合、東京よりもカリフォルニア州で働いた方が2.6倍近く稼げる計算だ。日米の賃金格差を象徴する事例となっている。