時給を上げなければ人が集まらない現実
バーガーチェーンを対象とした賃上げは、すでに全米でも時給が高いカリフォルニア州のレストラン業界に大きな影響を与えるとみられる。
米全国紙のUSAトゥデイによるとカリフォルニア州は、すでに全米でも3番目に最低賃金が高い。米労働省によると、首都・ワシントンの16.50ドル(約2460円)、ワシントン州の15.74ドル(約2340円)に続く15.50ドル(約2310円)となっている。これに対し、アラバマ州など5つの州では州法による規定がなく、連邦政府が定める最低時給7.25ドル(約1080円)が適用される。
店舗によってはすでに人材確保のため、20ドルを上回る時給を提示しているところも存在する。ニューヨーク・タイムズ紙によると、西海岸を中心に展開するバーガーチェーンのイン・アンド・アウトは、一部店舗において初任給時給17ドル(約2530円)、最高時給20.50ドル(約3050円)でアルバイト労働者を募集している。
ファストフード業界の劣悪な労働条件を変えた
特定の業界を対象とした最低賃金の引き上げは、アメリカでもあまり前例がない。今回の動きは、かねて労働搾取が指摘されてきた業界へのメスだと見る向きもある。
アメリカなどで展開する労働組合「SEIU」に加盟するファストフード労働者のイングリッド・ヴィロリオ氏は、CBSニュースに対し、「この10年間、カリフォルニアのファストフードのコック、レジ係、そしてバリスタは、業界に蔓延する低賃金と危険な労働条件について警鐘を鳴らしてきました」と語る。
SEIUのメアリー・ヘンリー国際会長は、「ファストフードのコックやレジ係は、この国の賃金をめぐる政治を根本的に変えました」と成果を強調する。
ヘンリー氏は「労働者たちが団結し、企業の権力や制度的な人種差別に立ち向かうことで、何が可能かという人々の考えに変化を与えたのです」と述べ、これまで不可能だと思われていたことが可能になったとの見解を示した。
20ドルという高額の最低賃金を手にした一方で、労働者たちの闘いはまだ始まったばかりとの意識もあるようだ。労働者擁護団体は賃上げを勝ち取ったものの、当初求めていたほどの大幅な賃上げには至らなかった。
ヘンリー氏はCNBCに送付した声明で、「カリフォルニア州におけるファストフード労働者の闘いは、まだ終わりに近づいたわけではありません。彼ら(労働者たち)が交渉のテーブルに着き、業界をより良い方向に変革するための準備をしており、(闘争は)まだ始まったばかりなのです」と訴える。