20%のサーチャージを請求しているレストランのオーナーは同局の取材にメールで応じ、「結局のところ、人々の外食は激減し、多くのレストランは生き残ることができないでしょう」「こうした事態が起きているのです。この冬は閉店する店舗が増えることでしょう」とコメント。人件費増による負の影響を訴えた。

日本で働くことの意味を見失うほどの好待遇

アメリカで賃金上昇のトレンドは続く。語弊を恐れずに言うならば、日本で働くことの意味を見失うほどの好待遇だ。ファストフード店のアルバイトで月収50万円を達成したり、物流会社にフルタイムで務めて年収が5年で370万円増加したりといった事例は、現在の日本ではほぼ起こることがないだろう。

もっとも、アメリカではインフレの進行に実質賃金が追いついておらず、昇給してもまだ生活に苦しい状況が家庭を襲っている。米ウォール・ストリート・ジャーナル紙は今年1月、2022年までの2年連続で賃上げ率がインフレ率に追いつかなかったと報道。「歴史的に好調な賃上げにもかかわらず、家計は悪化した」と論じた。

昨年12月の平均時給は前年同月比で4.6%上昇したが、インフレ調整後の実質時給は前年の前々年比・2.1%減に続き、前年比1.7%減になったという。一方、パンデミックに起因する物流の混乱や、パンデミックを契機とした早期退職による労働者不足は、その影響を徐々に弱めている。今後は実質賃金の改善の可能性もあるだろう。

対する日本では、アメリカほどの物価上昇に見舞われているわけではない。それでも、過去30年間給料がほとんど上がっていないとさえ言われる給与事情を鑑みるに、現地から届く昇給のニュースに心を揺さぶられる。

海外で新型のスマホが発表されるたび、あるいは海外旅行に出ようと下調べするたび、すっかり弱くなった円の存在感が心許ない。アメリカと比較すれば働くことさえ馬鹿馬鹿しくなる状況だが、「安いニッポン」を脱却できる日は来るのだろうか。

横断歩道を行き交う人々
写真=iStock.com/CHUNYIP WONG
※写真はイメージです
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