※本稿は、池上彰『池上彰の日本現代史集中講義』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
アメリカのラーメン店で5000円以上の出費
2022年秋、新型コロナウイルス感染症の拡大後初めてアメリカに行きました。海外取材は2年半ぶりのこと。
中間選挙を取材する中で、身にしみて感じたのが物価の高さです。かねてから進んでいた円安がピークに達しており、1ドルは約150円。ニューヨークで人気のラーメン店で食事をしたら、豚骨ラーメン(2400円)と餃子(1800円)で4200円になりました。これにチップ(840円)を加え、5000円以上の出費です。
日本のUber Eatsもそうですが、チップは選択式です。以前は10・15・18%から選ぶ形でしたが、今回は18・20・25%が選択肢でした。人件費も上がっているのですね。ニューヨークでは飲食店員の時給は20ドル程度が普通。日本の約3倍です。それでも人が集まらないそうです。
ニューヨークのマンハッタンで泊まった四つ星ホテルは、朝食なしで1泊約500ドル(7万5000円)。朝食は4500円でした。四つ星ホテルを選ぶのは決して贅沢をしたいからではなく、マンハッタンの治安を考えると必要なレベルなのです。五つ星ホテルなら1泊10万円以上はします。
マンハッタンのタワマン最上階は86億円
こうした物価水準から考えると、1泊5万円で泊まれる東京の五つ星ホテルは、アメリカ人にとっては「ビジネスホテル並みに安い!」と感じられるのです。
苦労しているのが日本円で給料をもらっている日本企業の若手駐在員ですね。「とても外食なんてできない」と嘆いていました。家賃が突然10万円上がったという話も聞きました。
ニューヨークは高層ビルの建設ラッシュで、景気の良さを肌で感じました。セントラルパークの近くに84階建てタワーマンションが建ちました。最上階の部屋は86億円だそうです。
とはいえニューヨークの治安は悪く、殺人事件は日常茶飯事です。バイデン大統領・民主党支持者の多い都市部は給料が上がっていますが、トランプ前大統領・共和党支持者の多い地域では、上がるのは物価だけ。給料が上がっていないと聞きました。地域による分断が進んでいます。