円安が止まらず、「安い日本」が定着
アベノミクスが狙った円安も、大きなデメリットをもたらしています。輸出には有利にはたらきますが、石油・天然ガスなどエネルギーの多くを輸入に頼る日本には逆風となっています。特にロシアのウクライナ侵攻以降、エネルギーや原材料費の値上がりによって、あらゆるモノの価格が急上昇しています。
アベノミクスは消費者物価上昇率2%を目標にしていましたが、2022年、通年の上昇率は2.3%となりました(変動の大きい生鮮食品は除きます)。2022年12月には4.0%となり、41年ぶりの上昇率を記録しました。目標としていた消費者物価上昇率は達成されたのですが、国民の生活は苦しくなるばかりです。
景気の良すぎるアメリカは利上げを続けてインフレを抑えようとしています。高金利のドルがますます買われ、円安が進むことになります。
こうして「安い日本」が定着してしまい、海外に行った日本人はあまりの物価の高さに驚かされ、日本が貧しくなったことを実感させられるのです。
株高と円安によって、一見、景気がよくなったかのように見えましたが、日本全体としてはきわめて貧しくなっているのが現状です。
政府と日銀の急務は金融緩和の「出口戦略」
先行きが見通せない中、いったい金融緩和をいつまで続けるのかという「出口戦略」が問題になっています。
安倍元総理の肝いりで据えられた黒田日銀総裁は任期を終え、新たに植田和男氏が起用されました。日銀総裁は歴代、日本銀行や旧大蔵省・財務省の出身者が務めてきましたが、植田氏は経済学者。戦後初めてのことです。総裁就任を予想できた人はいなかったのではないでしょうか。といっても、FRB(米連邦準備制度理事会)議長を務めたベン・バーナンキやジャネット・イエレンのように、中央銀行のトップを学者が務めるというのは世界的には珍しいことではありません。
円安を止めるには金利を上げればいい。しかし金利を上げれば景気が悪くなってしまう。このジレンマからどう脱出すればいいのか、政府と植田日銀総裁の舵取りが問われています。