岸田総理が何をしても不人気な理由
「増税メガネ」。防衛増税の検討や社会保険料の負担増が進むなかで、SNSを中心に急速に広まった岸田総理の「あだ名」だ。
不名誉な「あだ名」を返上するためだろうか。10月下旬、岸田総理は唐突に所得税減税を打ち出した。来年、1人あたり4万円の定額減税を、住民税非課税の低所得世帯には1世帯あたり7万円給付するという。
だが起死回生となるどころか、この減税策の評判はすこぶる悪い。ネットでは「働いてる人より、働いてない人の額が多いのはなぜ?」「その場しのぎではないか」と批判が噴出。応援団となるはずの自民党の世耕弘成参院幹事長からも「国民が期待するリーダーとしての姿勢を示せていない」と苦言を呈されるあり様だ。減税を打ち出して、ここまで批判された総理は初めてではないだろうか。
なぜ、岸田総理はここまで不人気なのか。私はかつてテレビ東京で「ワールドビジネスサテライト」などの記者として、現在は独立し、企業広報を支援するPR会社の代表として、様々な「トップの広報」に関わってきた。
そうした私の専門から見ると、岸田総理不人気の原因は明らかだ。原因を一言で表すなら、「トップの広報」で最重要の要素が欠けているからだ。岸田総理が何をしても不人気な理由を、「トップの広報」という観点から解き明かしてみたい。
広く支持されるトップの共通点
岸田総理と対照的に、高い支持率を誇った歴代総理の人気の理由を考えてみたい。高支持率だった総理の振る舞いを考えることで、「岸田総理が不人気な理由」が浮き彫りになるからだ。
近年、最も高い支持率を維持し続けた総理といえば、小泉純一郎氏だろう。2001年の内閣発足時には80%という驚異的な支持率を記録。5年以上の長期にわたる在任期間中も、概ね40%以上の支持率を維持し続けた。岸田内閣が発足から2年で、各社の調査で30%を割り込んでいるのとは対照的だ。
メディアを含め「広く支持されるトップ像」とは、どのようなものだろうか。私が企業からの依頼でトップをプロデュースする際は、主に2つのポイントを意識している。
ひとつは「変革性」だ。「現在の仕組みを問題なく回す」のは政府であれば官僚、企業であれば社員の役割であって、トップに期待されるものではない。広く支持されるトップは「何かを変える」ことを「旗」として掲げなくてはならないのだ。