「子会社にはなりたくない」というプライド

足許、世界の自動車業界を取り巻く環境変化が凄まじい。そうした中、日産自動車は生き残りをかけてホンダとの統合の協議に入るはずだった。ところが、ホンダ側から子会社化の提案を受け、日産は一気に態度を硬化させ協議は破談となった。

2024年12月、経営統合の本格的な協議に入り、記者会見する日産自動車の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長=東京都中央区
写真=共同通信社
2024年12月、経営統合の本格的な協議に入り、記者会見する日産自動車の内田誠社長(左)とホンダの三部敏宏社長=東京都中央区

2月6日、日産自動車の内田誠社長は、ホンダの三部敏宏社長に経営統合に向けた協議を打ち切る方針を伝えたと報じられた。専門家の間では、日産の“プライド”が子会社化の一言で統合への道を断念したという。ただ、日産が独自に生き残るのはかなり厳しいだろう。日産は、これからどのような道を歩むのだろう。

自力で“変革の波”を乗り越えられるのか

現在、世界の自動車業界は“100年に一度”の大変革期にあるといわれている。昨年は米欧で電気自動車(EV)シフトは鈍化したが、やや長い時間軸で考えると、自動車需要はエンジン車から電動車へシフトすることは間違いないだろう。それと同時に、“自動車のソフトウェア化”も加速している。2030年代、自動車企業の収益の3割以上をソフトウェア関連の収益が占めるとの予想もある。

自動車の価値を決める基準が、ソフトウェア化の進捗に依存する時代が来る可能性が高い。自動車のソフトウェア化には、多額の開発費がかかるだろう。それを捻出できないと、世界の主要メーカーから脱落することが想定される。

これまでにも、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業は日産との提携や買収を狙っているといわれてきた。仮に、海外企業が日産の経営を主導するとなれば、大規模なリストラ実施の可能性も高いだろう。今回の交渉打ち切りは日産だけでなく、わが国の経済、安全保障にも無視できないマイナスの影響をもたらす可能性がありそうだ。