岸田政権の支持率下落が止まらない。ジャーナリストの鮫島浩さんは「1人4万円の定額減税などを打ち出しているが、安倍元首相の『10万円の一律給付』に比べて、せこい、遅い、わかりにくい、不公平という批判を受けている。来年秋の自民党総裁選までは続きそうだが、その前に電撃辞任する可能性も捨てきれない」という――。
記者会見で、自身が「増税メガネ」と呼ばれていることについて答える岸田文雄首相=2023年11月2日午後、首相官邸
写真=時事通信フォト
記者会見で、自身が「増税メガネ」と呼ばれていることについて答える岸田文雄首相=2023年11月2日午後、首相官邸

起死回生の減税が完全に裏目に出た

異例ずくめの所得税減税である。首相が「増税メガネ」という不名誉なあだ名を嫌って減税を打ち上げたことも、その減税が国民から総スカンを喰らって内閣支持率を押し下げたことも、前代未聞だ。

物価高が加速する中で断行した9月の内閣改造・自民党役員人事は不発に終わり内閣支持率は下落した。ネット上では岸田文雄首相を「増税メガネ」と揶揄する言説が左右双方から飛び交い、トレンド入りした。

首相自身が昨年末に防衛力強化の財源を確保する「防衛増税」(所得税、法人税、たばこ税)を表明したことや、財界から消費税増税を求める声が相次いだことから、岸田首相には増税イメージがすっかり定着していたのである。

岸田首相が起死回生の人気回復策として執着したのが所得税減税だった。

これが不人気に拍車をかけた。所得税減税を柱とする経済対策の骨格が固まった時点でANNが行った世論調査で、内閣支持率は政権発足以降最低の26.9%に急落。所得税減税を「評価しない」と答えた人は56%にのぼり、その理由として41%の人が「政権の人気取りだと思うから」と答えた。

自らの増税イメージを払拭するための減税、つまるところ「岸田首相による岸田首相のための減税」であることを世論は見透かしている。何をやっても嫌われるのが今の岸田首相だ。

自民党政権が左右双方からここまで見放されたのは、支持率が一桁まで落ち込んだ森喜朗首相や総選挙で大敗して自民党を下野させた麻生太郎首相以来だろう。

せこい、遅い、わかりにくい、不公平

所得税減税の中身も国民の怒りを燃え上がらせた。

まずは、せこい。減税実施は1年限り。しかもひとり4万円の定額減税だ。安倍政権がコロナ対策で現金10万円を全員に一律給付した特別定額給付金と比べて見劣りする感は否めない。

次に、遅い。減税が実施されるのは来年夏。国民は日々の物価高騰に直面している。半年以上も先の減税などあてにできない。安倍晋三首相が10万円の一律給付を記者会見で表明した2カ月後に給付率が5割を超えたのと雲泥の差だ。