自民党議員らのフランス研修が「観光旅行のようだ」と批判を集めている。PR戦略コンサルタントの下矢一良さんは「今回の炎上劇の背景には、権力者が陥りがちな『勘違いの構図』がある。具体的には『業界の当たり前に浸り、世間の常識を見失う』『自分には人気があると勘違いしてしまう』『自分を諫める存在がいない』という3つの落とし穴が見て取れる」という――。
内閣府大臣政務官 今井絵理子
内閣府大臣政務官 今井絵理子(写真=内閣府/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

海外研修で羽目を外している様子を「自ら」投稿

松川るい参議院議員や今井絵理子参議院議員らがX(旧ツイッター)に投稿した写真が批判を浴びている。自民党女性局の海外「研修」でフランスを訪問したのだが、どう見ても観光旅行にしか見えない写真の数々を投稿したのだ。

松川議員はエッフェル塔のポーズで記念撮影、今井議員も他の参加者と一緒にバスの車中で笑顔で撮った写真などをあげていた。当然、X(旧ツイッター)では「国民は物価高や重税に苦しんでいるのに、税金でフランス観光か」といった批判が殺到した。その結果、自民党女性局長の松川議員が「大変軽率だったと反省している」と、報道陣の前で謝罪せざるを得ない事態となったのだ。

今回の炎上劇だが、海外「研修」で羽目を外している様子を週刊誌や観光客などに盗撮されたわけではない。本人が「自ら」進んで投稿した結果、批判を浴びているのだ。本人は炎上するまでは、炎上どころか「応援してもらえるはず」と思い込んでいたのだろう。

なぜこのような本人による勘違いが生じてしまうのだろうか。実はこの「勘違いの落とし穴」は、国会議員だけに限ったものではない。経営者や管理職などでも陥りがちなものなのだ。

かつてはテレビ東京経済部の記者として、現在は企業の広報PRを支援する立場として、数多くの有名経営者に接してきた経験から権力者ほど「勘違いの落とし穴」に嵌まる構図を解き明かしてみたい。

国会議員の海外視察はどれほど多いのか

落とし穴、その1:「業界」の当たり前に浸り、「世間」の常識を見失う

夏休みシーズンに政治家の海外「視察」が相次ぐというのは、少しでも永田町に関わったことがある者には「常識」だ。どれほど海外「視察」が多いのか、コロナ禍で海外渡航が困難になる前の2019年を例にみてみたい。「衆議院の動き」という衆議院が発行している冊子の「議員海外派遣」の項目に詳しく書かれている。

これによると2019年は全17回、議員団が派遣されている。そのうち、実に13回が8月に集中、8月は70人近い議員が派遣されている。衆議院の正式な議員団だけに、与野党の混成部隊だ。自民党では森山裕氏(現・選挙対策委員長)、高木毅氏(現・国会対策委員長)、立憲民主党では辻元清美氏、野田佳彦氏(元総理)、海江田万里氏(現・衆議院副議長)など、「大物議員」も含まれている。