筆者が自民党本部で見た女性議員の困難な状況
落とし穴、その3:自分を諫める存在がいない
国会とは「超」が付くほどの「男社会」だ。衆議院の場合、女性議員の割合は1割程度に過ぎない。今回の炎上を引き起こした「女性局」なる部門が昔から存在するほど、女性は「特別な位置付け」にあると言える。
この「超・男社会」で、私は女性議員の困難な状況を垣間見る機会があった。今から約20年以上前に私が政治記者だった頃、自民党本部を歩いていたときのことだ。党本部の廊下で野田聖子議員とかなり高齢の男性議員が立ち話をしている。この高齢の男性議員、なんと野田議員と話している最中、ずっと野田議員の手を握っているのだ。握手ではなく、両手で包み込むように手を握りしめている。この間、野田議員は特に嫌な顔もせず、平然と会話をしている。
この高齢の議員だが、派閥の長、幹事長といった権力者ではない。なので、野田議員が権力者に媚びて手を握らせていたということは、決してない。ただの「スケベ親父」による、若い女性議員へのセクハラなのだ。さすがに今ではここまで露骨なセクハラはないだろうが、立法府にあるまじき、お粗末極まりない「職場環境」ではないか。
会社での上司にあたる「教育役」が存在しない
このように国会とは男性優位にして、女性が不利益を被りやすい「職場環境」と言える。
会社には自分の上に必ず上司や先輩がいる。上司は部下を教育する責任を負っている。それゆえ、会社に勤めていれば「教えられる機会」は多い。だが国会議員には「誰かに教えてもらう機会」というのは、少ない。というのも、国会議員には会社での上司にあたる「教育役」が存在しないからだ。国会議員とは各々が独立した個人事業主、あるいは零細企業の社長と言ってもよいかもしれない。
男性議員同士であれば、酒の席などでざっくばらんに先輩が助言することもあるだろう。男社会では、仕事の本音の話は男同士で語られることがほとんどだ。圧倒的な男社会にあって、女性議員が先輩からストレートな忠告を受ける機会はほとんどないのではないか。
議員として発信すべき情報、逆に発信を避けるべき情報。こうした振る舞い方を日常的に指導する先輩がいれば、このような炎上は起きなかったかもしれない。