事前に警戒させることで心を開く方法もある

【耳の痛い話をする】
三流は、嫌われたくないから言えず、
二流は、ストレートに伝え、
一流は、どう伝える?

前項の「叱る」も今回の「耳の痛い話」も、同じようなテーマですが、耳の痛い話となると、さらに相手にとっては聞くのが辛いイメージがあります。先ほどは、「心を開くとは、警戒心を解くこと」と解説しました。逆に、警戒してもらうことで、心を開く方法もあります。それが「許認可」というやり方です。

事前に相手から許可を取ることです。いきなり耳の痛い話をして相手に受け入れてもらえるのは、関係性ができている場合だけです。突然耳の痛い話をするのは、ギャンブルに近い行いです。だからこそ、事前に警戒してもらう「許認可」という方法が効いてきます。こういう質問を差し込みます。

「今から耳の痛い話をするけどいい?」
「一つだけ厳しい話をしたいんだけどいいかな?」
「少し酷かもしれないけど正直に伝えてもいい?」

先に言っておく。筋を通しておくイメージですね。質問というより、宣言に近いです。相手は「嫌です」とは言いにくいですからね。でもこれが本当に大事。なぜなら、相手の心構えができるからです。

許可を取ることで相手が受け入れる態勢を作る

私は、趣味でキックボクシングをやっていますが、不意にパンチをくらうと素人のパンチでも頭がクラクラします。逆に、ちゃんと構えていれば強烈なパンチをもらってもそれほど効きません。準備ができているからです。理屈はこれと同じです。信じられないかもしれませんが、許可を取らずに言うのと、たとえ形式的にでも許可を取ってから言うのでは、相手の印象は全然違います。

「怒らないで聞いてもらえる?」
「失礼を承知で一つ伝えてもいい?」
「気乗りしないかもしれないけど一ついい?」
桐生稔『質問の一流、二流、三流』(明日香出版社)
桐生稔『質問の一流、二流、三流』(明日香出版社)

こう質問されて、「言わないでください」という人はほぼいないでしょう。相手も気になるからです。しかも、この質問によって、一瞬構える間ができます。この間が相手の準備タイムをつくります。「ひとりごとだと思って聞いてもらっていい?」というものもあります。ひとりごとなわけないのですが(笑)、これも相手に構えてもらうアプローチです。

言いたくないけど、言わなきゃいけないときもあります。相手を傷つけたくないからこそ、即座に相手の気持ちを考える。そして気遣いをした上で、伝えるべきことを伝える。自分の出世のために怒る上司と、部下のために怒る上司とでは、この気遣いが圧倒的に違います。部下から同じように慕われるわけがありませんよね。相手が嫌がる話ほど、事前の質問が功を奏してくるのです。

一流は、許可をもらう質問をする
⇒構えてもらうことで相手の受け入れ態勢を整える
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