加盟店が爆増した理由
加盟店オーナーは、初期投資の低さとともに、投資回収期間の短さにも注目をする。
例えば、初期費用が1000万円で、光熱費や材料費などを引いた月の利益が30万円だとすると、投資回収期間は33.3カ月ということになる。これは加盟店オーナーにとってきわめて重要な指標だ。
どんな商売でも、儲かることもあれば儲からないこともある。儲からなければ撤退を決断しなければならない。しかし、投資資金が回収できていない段階の撤退は地獄の苦しみとなる。資金をドブに捨てる損切りほど商売人にとって苦しいことはないからだ。
これが、投資資金を回収して、あとは利益を積み上げるだけの状態になっていれば、撤退が必要でも冷静に判断ができる。そのため、投資回収期間が短いフランチャイズに人気が集まる。
蜜雪氷城の投資回収期間は6カ月から10カ月となっており、他のフランチャイズに比べて短い。投資回収期間をすぎれば投資として損をすることはなく、あとは稼ぐだけ。
2018年に激安のソフトクリーム販売が始まり、客数と店の知名度が上がったのを機に、店舗経営の魅力も広く知れ渡った。そして加盟店オーナーが一気に集まり、店舗数が急速に増えたのだ。
このハードルの低さは、日本のフランチャイズのデータと比べてみるとよくわかる。「フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書」(経済産業省)によると、加盟店になるための初期費用の平均は3292万円であり、本部想定の投資回収期間は「4年から5年」が最も多くなっている。
本部はどうやって稼いでいるのか
このデータはファミリーレストランなどのもので、ドリンクスタンドである蜜雪氷城と直接比較することはできないが、蜜雪氷城の投資回収期間がかなり短いとわかる。
とはいえ、加盟費も取らない、ロイヤリティーも少ない中で、蜜雪氷城の本部はどうやって103.5億元もの売り上げを稼いでいるのだろうか。
その答えは、2022年Q1の収入内訳を見るとわかる。加盟費による収入はわずか2.6%で、食材、包装材料、設備などの加盟店への販売がほとんどとなっている。
蜜雪氷城では、2013年に食品製造の大珈食品を設立し、すべての食材を一括生産している。またレモンなどの果物も専用農園を持ち、一括生産する。
店舗に対しては、パウダー、濃縮果汁、ペーストなどの形にして販売をする。このため、加盟店では調理という作業がほぼ不要だ。レシピに従って、パウダーや果汁、水などを混合していけば商品ができあがる。技術が必要なのは、ソフトクリームのうず巻きをつくることぐらいだ。