わずか2年半で2万3000店増えた

100円の高山四季春、原葉紅茶ともに茶葉の味がちゃんと感じられ、自然な渋みで口がさっぱりした。360円の小豆ミルクティーも、上品な甘さで後味も爽やかだった。

高山四季春(100円、左)と小豆ミルクティー(360円、右)。ミルクティー系も他チェーンの半分程度の価格。
筆者撮影
高山四季春(100円、左)と小豆ミルクティー(360円、右)。ミルクティー系も他チェーンの半分程度の価格。

もちろん、味は主観的なものであり、タピオカティーで有名な春水堂(チュンスイタン)や貢茶(ゴンチャ)といった有名チェーン店と同じ価格であれば、選ばれないかもしれない。しかし、蜜雪氷城は半額だ。

また、100円の中国茶は約500mlと容量はたっぷり。コンビニや自動販売機のペットボトル飲料よりも安くておいしい。コストパフォーマンスは非常に高い。実際に中国では、蜜雪氷城ができると近くのコンビニのペットボトル飲料が売れなくなると言われている。

激安だけど安物ではない標準品質。これが蜜雪氷城の大きな強みになっている。

さらに蜜雪氷城のビジネスモデルの最大の特徴は、フランチャイズ加盟店になるのに加盟費が無料ということにある。中国国内では、この2年6カ月で2万3000も店舗が増えているのだが、それはコストのかかる直営店ではなく、各地で勝手に増えていくフランチャイズ店だからだ。

蜜雪氷城の中国国内店舗数の推移。創業は1997年だが、2018年に2元(約40円)のソフトクリームの販売が起爆剤となり、コロナ禍の中でも「爆速成長」を始めた(極海品牌監測のデータより筆者作成)
蜜雪氷城の中国国内店舗数の推移。創業は1997年だが、2018年に2元(約40円)のソフトクリームの販売が起爆剤となり、コロナ禍でも「爆速成長」を始めた(極海品牌監測のデータより筆者作成)

初期加盟費はゼロ、ロイヤリティーも定額

通常、土地などを持っているオーナーがフランチャイズ加盟をして店舗を運営するには、最初にまとまった初期加盟費を支払い、その後、多くのチェーンでは「売上高の何%」という形でロイヤリティーを本部に支払う。本部は、加盟費とロイヤリティー、店舗に対する食材販売などで利益をあげる。

蜜雪氷城では、この加盟費が不要で、ロイヤリティーも定額制になっている。もちろん、店舗を出すには、管理費や研修費、初期仕入れ、さらには設備、改装費なども必要だが、すべてを合算しても37万元(約740万円)の初期投資で加盟店を開くことができる。あとは7000元(約14万円、「県級都市」の場合)のロイヤリティーを毎年支払うことで商売が続けられる。

「加盟費なし」という手法は、中国の多くのフランチャイズに影響を与えている。例えば、カフェチェーンの「瑞幸珈琲」(ラッキンコーヒー)も取り入れている。ライバルのスターバックスが2025年までに9000店舗にする計画を打ち出すやいなや、ラッキンは加盟費なしのフランチャイズ展開を導入。スタバのひと足先に1万店舗を突破した。これにより中国のスタバは新たな計画を練らなければならなくなったほどだ。

県級の地方都市ではロイヤルティーも年7000元の定額制。初期費用は店舗改装費、研修費、初期仕入れなどもろもろ入れて37万元(約740万円)で、店舗を開くことができる。蜜雪氷城公式サイトより引用。
県級の地方都市ではロイヤリティーも年7000元の定額制。初期費用は店舗改装費、研修費、初期仕入れなどもろもろ入れて37万元(約740万円)で、店舗を開くことができる。蜜雪氷城公式サイトより引用。