ゴールデンルートは「一度行けばもう十分」

8月10日、中国から日本への団体旅行が約3年半ぶりに解禁になった。日本では「爆買いが復活か」と大きな話題になっているが、私は、以前ほど中国人は日本にやってこない、と考えている。

混雑したアメ横
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その第一の理由は団体旅行自体の減少だ。中国人の訪日旅行は個人旅行と団体旅行の2種類あるが、コロナ禍前の2019年の時点で、すでに訪日中国人観光客の7割は個人旅行客が占めており、団体旅行客は3割にまで減少していた。今後、このトレンドは変わることはないだろう。

団体旅行の人気がない理由は、自由時間が少なく、ありきたりで、SNSで他人にあまり自慢できない内容だったからだ。

コロナ禍前、中国人の団体ツアーの多くは「ゴールデンルート」と呼ばれるものだった。成田空港(または羽田空港)から入国し、関西国際空港から帰国する(またはその逆パターン)というのが定番の行程。東京の浅草や銀座、山梨県の忍野八海、神奈川県の箱根などを巡り、新幹線に乗って名古屋、京都の清水寺、大阪のUSJなどを巡るという5~7日程度のコースだ。銀座などで自由時間が与えられ、その間にショッピングはできるものの、一度行けばもう十分という内容だった。

団体客の正体は所得の低い人たちだったが…

今回、団体旅行が解禁になったことを受け、日本の有名観光地では期待と不安が交錯しているが、中国の旅行会社の団体ツアー内容を見てみたところ、こうしたありきたりの内容は以前よりも減っていた。例えば、親子で参加する日本でのグランピングツアーや、温泉を巡るツアー、5日間のツアー中、丸1日は自由行動にするツアーなど新しい形態になっていた。

だが、こうした内容であれば最初から個人で自由に旅行するほうがよいと考える人も多く、中途半端であることは否めない。日本人の中には今でも「全部お膳立てしてくれる団体旅行のほうが楽だ」と考えて、言葉が通じない海外などでは、あえて団体旅行を選択する中高年もいるが、中国人にはそうした発想はない。

そもそも、中国人は所得によって取得できるビザが異なり、所得の低い人は個人旅行をするビザは取得できないので、海外に行きたいなら、団体旅行に参加するしかない。だが、団体旅行に参加すると「現地の中国人ガイドにピンハネされたり、騙されたりするのでは……」「好きな買い物をする時間がない」「他人に合わせて集団行動をとらなければならない」と考え、団体旅行に対してネガティブなイメージを抱いている人が多い。