気づけばマナーが悪い光景もめっきり減った
こうした人々はコロナ前もすでに増えており、コロナ禍によって変化したわけではないが、日本のメディアではあまり注目されなかった。その理由は町に溶け込んでいるため「目立たない」からだ。服装もシックだし、行列にもきちんと並ぶ。大声でおしゃべりせず、日本のルールを事前にしっかり学んでいる。顔も同じ東洋人なので、日本人と変わらない。団体で行動していないので、日本のテレビ番組などでは「ここに中国人が来ています」と紹介しにくい。
爆買いブーム以降、日本では中国人のマナーの悪さがクローズアップされた。行列に並ばないで横入りする、地べたに座る、大声でしゃべる、といったことが指摘された。現にそうした人々が多かったのは事実だが、最近ではめっきり減った気がする。
2019年ごろ、私は中国からの団体ツアーを取材したことがあるが、その頃、中国でも「日本で中国人のマナー問題が大きく報道されている」ことは知られており、団体ツアーの主催者から参加者に「日本旅行で気をつけることリスト」が配られていた。そこには、「地べたに座らないこと、大声を出さないこと」なども書かれていた。日本旅行だけに限らないが、「海外に行ったら、マナーに気をつけること」は中国から出国する人々にだんだんと周知されていったように私は感じている。
彼らの意識の変化は想像以上に速い
つい最近、私は東京・新宿の百貨店のレストランフロアで、椅子に座って入店待ちをしていたのだが、中国人の若い男性数人(おそらく個人旅行客)が、椅子に座っている人々に気づかず、店内に入っていこうとしたところに遭遇した。しかし、その中の1人が椅子に座っている私たちに気づき、「おい、こっちに並んでいる人がいるよ、並ばなきゃ」と他の友人に声をかけていた。こうしたことに気づけるようになったことは大きな進歩だと思う。
むろん、中国人にはさまざまな人がいる。まだマナーがなっていなかったり、日本人に迷惑をかけたり、不愉快な思いをさせる人もいなくなったわけではない。だが、比較的富裕層の個人旅行客が増えていけば、次第にお行儀のよい中国人が増えていくことは自然の流れだ。
マナーが悪い中国人は日本に来るな、という声も日本ではまだまだ大きいが、彼らは日本人が想像する以上に速いスピードで意識が大きく変化している。これは爆買いだけに限らず、あらゆる事柄において同じだ。団体旅行が解禁となった今、私たちは彼らのどこが、どのように変化しているのか、その実態に真摯に目を向ける必要があるのではないだろうか。