「団体旅行=時代遅れ」と考える人が増えている
日本の一部報道では、今回、団体旅行が解禁になった背景に、中国国内のオーバーツーリズム問題があり、中国政府が、国内旅行をしていた人々の目を海外に向けさせる狙いもあるとされていた。だからといって、厳しい経済状況の中、国内旅行から海外旅行へと簡単に切り替えられる人がどれほどいるのか、という疑問も浮かぶ。日本でも同様だが、コロナ禍を経て、海外旅行できる人とできない人の差は以前よりも大きくなっている。
これらの理由で、中国人の団体旅行が解禁されても、日本人が予想するほど中国人団体客は日本にやってこないのではないか、と私は考えている。むろん、中国人は分母が多いので、10月の国慶節の大型連休の時などは、ある程度まとまった人数が来るだろう。まったく来なくなるといっているわけではない。
しかし、ここまで紹介してきた通り、8年前に起きたような「爆買い」現象はもう起こらない。コロナ禍の際、ゼロコロナ政策で移動の自由を厳しく制限された中国では、日本と同じようにキャンプが流行した。マイカーでの少人数の移動も増え、団体で公共交通機関に乗ることは大幅に減った。そうしたことが習慣化されたこともあり、団体旅行=時代遅れ、といった認識を持つ人が増えているのではないか、と私は感じている。
今後は「目立たない中国人」が増える
では、今後、主流になるのは何かといえば、コロナ禍前から中心となっていた個人旅行客であることは間違いない。個人旅行ができるマルチビザは「3年マルチビザ」と「5年マルチビザ」があり、年収は少なくとも500万円以上の中間層から1000万円以上の富裕層だ。
彼らはすでに、日本を含めた海外旅行を何度も経験済みなので、自分なりの目的を持って自由にオリジナルの旅行を組み立てている。ショッピングもするが、美術館巡りやラーメン店巡り、地方のひなびた温泉巡り、アニメの聖地巡礼、スキー体験、好きなアーティストのライブに行くなど、日本人も舌を巻くほど日本の詳細な情報を入手し、自分の好きなところへ行く。
人数は1人または2~3人の友人同士、カップルなどで、少人数で行動するので、日本人の目には、一見して「中国人」だとはわからない。彼らは見た目も洗練されていて、日本以外の国・地域への旅行経験も豊富、英語や日本語を話すからだ。むろん、直接話せば、「中国人」だとわかるが、彼らはスマホで地図情報なども入手できるので、日本の町に溶け込んでいるのだ。