AYA世代のがんは白血病、リンパ腫、性腺腫瘍などの希少がんが多い
AYA世代(15歳以上、40歳未満)でがんを発症する人は毎年2万人。受験、就職、結婚、妊娠とライフイベントが集中する時期だけに、このAYA世代のがん患者をどう支援していくかが近年の課題になっている。20歳で甲状腺がんを患った当事者の話を聞きながら、私たちに何ができるかを考えてみたい。
AYA世代のがんは、がん患者全体の2%程度と数は少ないが、白血病、リンパ腫、胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、脳腫瘍、甲状腺がんなど、希少がん(新規に診断される症例の数が10万人あたり年間6例未満のがん)が多く、治療法が確立されていないものも少なくない。(図表1)。20代からは子宮頸がんや乳がんなど女性に多いがんや、また消化器のがんなど、成人に多く見られるがんも増えてくる。
「AYA世代のがんは、数が少ないがためにスルーされてきました。診療先も多岐にわたっていて、当事者の声がなかなかまとまった形にならなかったので、社会的な課題として認識されませんでした。同じ世代で同じような症状の患者さんに、患者さんが病院内で会うことはないし、地域の若年人口のギャップもあり、医療者同士でも話題になりにくかったのです。こうしたことが厚生労働省の研究事業で明らかになり、それを機に立ち上げたのがAYA研でした」
(清水千佳子理事長、国立国際医療研究センターがん総合診療センター乳腺・腫瘍内科医師)
数少ない若年のがん患者をつなげ情報提供する取り組み
通称、AYA研とは、AYA世代のがん患者に対する包括的な医療・支援の提供を目指す、一般社団法人「AYAがんの医療と支援のあり方研究会」(本部・愛知県名古屋市)。同会はがん領域の学術活動、教育活動、社会啓発などが中心だが、このほどLINEの公式アカウントを開設し、経験談、患者会、仕事や学校の悩み、医療費など、若いがん患者が知りたい情報を発信している。
「開設以来、5000人以上の登録があり、知りたい人が知りたいことにたどり着けるといいと思っています。私のときは、情報が入手できず、住んでいる地方に患者会があるかどうかもわからず、地方都市で孤立していました」
こう話すのは、研究会で広報などを担当するスタッフの三島久子さん(仮名、30歳)だ。三島さんは、20歳、大学3年生のときに甲状腺がんと診断された。甲状腺とは、のどぼとけの下にある蝶のような形をした臓器で、体全体の新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌している。その甲状腺のがんは、20代のがんでは第2位にランクされている。
たまたま友人に誘われて行った大学の健康診断で「甲状腺に問題があるかもしれない。腫れているので専門医に見せたほうがいい」と言われた。甲状腺と言われてもどこの臓器かもわからなかった。扁桃腺と勘違いしたくらいだ。取り急ぎ、総合病院でレントゲンを撮影したが「気にすることはない。良性でしょう」との診断だった。