ギャンブル依存症の患者が増えている。国⽴精神・神経医療研究センターによると、2013年度の患者は1123⼈だったが、2020年度には3954人となっている。読売新聞メディア局の染谷一さんは「要因の一つは、これまでギャンブルと依存の関係がきちんと研究されてこなかったことがある。パチンコやスロットを依存症の元凶と糾弾しても根本的な解決にはつながらない」という――。

※本稿は、染谷一『ギャンブル依存』(平凡社新書)の一部を再編集したものです。

パチンコ店
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パチンコ依存→借金→コンビニ強盗

運用方法に課題はあるにしても、生活保護というシステムがあり、国民皆保険に守られている日本でも、ホームレスが後を絶たない現実を踏まえ、独自に「ギャンブル依存症問題研究会」を立ち上げた「ビッグイシュー基金」は2016年、ギャンブル問題当事者の体験談集『ギャンブル依存症からの生還――回復者12人の記録』を発行した。

「高校生のときにパチンコにはまり、消費者金融からの借金を重ねて、最後にはコンビニ強盗で逮捕された20代男性」「育児ノイローゼのため、子供を預けて逃避したパチンコがやめられなくなり、やがて精神科にかかって安定剤の薬剤治療を受けつつも、泣きながら打ち続けた40代主婦」……。

掲載された体験談を目で追っているだけで、読む側の胸は張り裂けそうになる。さらに、ビッグイシュー基金は、2015年、18年の2度にわたって冊子『疑似カジノ化している日本』を発行し、気鋭の学者らと一緒に、統計的な根拠などに基づいてギャンブル依存の問題を多角的に検証した。

GDP世界第3位の先進国が「国家的疑似カジノ」とはなかなか過激だが、まとめられたデータを見る限り、それが決して大げさではないことが理解できる。

世界でも突出したギャンブル依存の割合

たとえば、各国の「ギャンブル障害(依存)」の有病者割合。アメリカ0.42(ラスベガスに限ると3.5)パーセント、カナダ0.5パーセント、英国0.5パーセント、スイス0.8パーセントなどの数字が並ぶが、日本はなんと3.6パーセントだった。

アジアでも、カジノが盛んなマカオでさえ1.8パーセントなので、日本の突出ぶりは際立っている。しかも、日本国内の2008年の調査にさかのぼると、男性9.6パーセント、女性でも1.6パーセントと、目を疑うような結果が出た。電子ギャンブル機数は米国の5倍、イタリアの10倍以上驚くデータはまだある。

もともと、ギャンブル(賭博)は、伝統的にルーレットやカードなどのテーブルゲームが主流だった。日本でも、江戸時代にはサイコロを使った「丁半賭博」、昭和になると「花札」「賭けマージャン」が中心だった。

ところが、1990年代からは、スロットマシンなどに代表されるEGM(ElectronicGamingMachine)、いわば電子ギャンブル機が、世界的に広がりを見せた。

「ゲーム機械世界統計2016」の国別EGM設置台数によると、米国86万5800台、イタリア45万6300台、ドイツ27万7300台などの2位以下を大きく引き離し、日本は457万5500台。文字通り、桁違いの結果となっている。それがパチンコ台、パチスロ台であることに疑問を挟む余地はない。