同じグループの人数が増えれば増えるほど、人の心には自然と「自分が全力を出さなくても、ほかの人が頑張ってくれるからいいや」という気持ちが芽生えてきます。

これは「リンゲルマン効果」もしくは「社会的手抜き」と呼ばれる現象です。しかも、ダーリーとラタネが行った別の実験により、こうした手抜きは無意識のうちに行われることが明らかになっています。

周囲の人間に惑わされてはいけない

これまで見てきたように、基本的にはチームやグループ、会社などの人数が多くなればなるほど、傍観者効果やリンゲルマン効果が働き、自分の仕事に責任を持たないメンバー、頑張らないメンバーが増えます。その結果、まず集団としてのモチベーションの低下、組織の生産性の低下が起こりますが、弊害はそれだけではありません。

「働きアリの法則」のことは、おそらくみなさんご存じでしょう。働きアリの法則とは、アリの集団を「よく働くアリ」「普通のアリ」「働かないアリ」の3種類に分けたとき、必ず、よく働くアリが全体の2割、働くこともあれば働かないこともある普通のアリが6割、まったく働かないアリが2割になるという法則のことを指しますが、これは人間にも当てはまるといわれています。

たとえば、最初、その組織に100人のメンバーがいたとすると、20人は熱心に働き、60人は普通に働き、20人はあまり働かない、という分布になります。

そして、熱心に働いていた20人が、負担の多さ、ほかの人たちの勤務態度に嫌気がさして退職し、組織の人数が80人になったとすると、今度は16人が熱心に働き、48人が普通に働き、16人はあまり働かない、という分布になります。

通勤するビジネスマン
写真=iStock.com/AzmanJaka
※写真はイメージです

本当に大切にするべき人を見極めたほうがいい

どれほど人が多い組織でも、中には必ず意欲を持って仕事に取り組むメンバーがいるはずなのですが、やる気やモチベーションの低いメンバーが多いと、意欲の高いメンバーの負担が増え、モチベーションの低下が伝染したり、離職率が高くなったり……といったことが起こりやすくなります。そのような組織は、衰退の一途をたどるしかありません。

あなたが仕事へのモチベーションを維持し、仕事に積極的に取り組み、より高い収入を得たいと考えるなら、働きの悪い上司や、意欲やモチベーションの低い同僚に期待したり、不満やストレスを抱いたりしている場合ではありません。

傍観者効果やリンゲルマン効果が作用してしまう以上、組織において、そうした人が一定数生まれてしまうのは仕方がないことなのです。

そこにエネルギーや時間を割くよりも、組織の中で本当に大切にするべき相手と理想的な人間関係を構築すること。

それが、限られたあなたの時間を有意義に使い、パフォーマンスを高め、あなたがビジネスで成功し、豊かな人生を送るための鍵となります。