復職する選択肢もあったが…
勤めていた会社から不当解雇された当時、私の年収は約500万円だった。これは国税庁が「令和3年分 民間給与実態統計調査」で発表している男性の平均年収(545万円)とあまり変わらない。
内訳は、月給が約35万円(基本給22万円。資格手当と家賃補助が7万円。月平均40時間前後の残業代が6万円)。賞与は夏冬合計で80万円。これらの年収を29歳で得ることができる雇用条件は、客観的に見ても恵まれているといえる。
その後、会社を相手取り裁判を起こした結果、約4000万円の支払いを条件に会社と和解したことは前回記事で述べた(〈解雇通知書はカネになる…2社から裁判で計4700万円を勝ち取ったモンスター社員の「円満退社」の手口〉参照)。その際、不当解雇も取り消されたので復職するという選択肢もあった。
だが、それでも私は元の会社には戻らなかった。なぜならこのような組織は、何かの出来事をきっかけにブラックな側面をたちまち露わにし、働く人の人生を台無しにする暴走を始めかねないからだ。
実際は違法労働が横行しているにもかかわらず、給与や諸待遇は悪くないため求人サイト上では一見ホワイト企業に見えることから、私は「隠れブラック企業」、または「グレー企業」と呼んでいる。
1.固定残業代=労務管理がちゃんとできていない
このような企業にはどのような特徴があるのか。私は主に以下の3点だと考える。
・事実と感情をごちゃ混ぜにして議論するなど、上司や役員が物事を切り分けて思考することができない
・ホウレンソウ(報告・連絡・相談)が私利私欲のため正常に機能していない
固定残業代とは、実際の残業時間にかかわらず、給与にあらかじめ一定の残業代を組み込んでおく制度のことだ。
企業からすると固定残業代導入のメリットは多い。募集要項の給与の見栄えが良くなり、基本給の引き下げが狙えるためボーナスや残業代を低く抑えられる。逆に労働者側のメリットとしては「設定された残業時間内よりも早く業務を終わらせれば、大して働いていない日でも残業代がもらえること」が教科書的な回答として挙げられる。
けれどもご存じの通り、社会は甘くない。社会経験のない就活生ならいざ知らず、業務の効率化に成功すれば新たな仕事が振られることは目に見えている。そもそも冷静に考えると、1分単位で残業代を支払えば固定残業代を導入する必要はないはずだ。
つまり私が思うに、固定残業代を導入している時点でその会社は従業員を大切にしておらず、労務管理が杜撰である可能性が高い。