みなさんの職場のことを思い浮かべてみてください。会議で積極的に発言する人、会社の業績アップに貢献している人は限られていませんか?

上司や同僚の中に、あなたから見て、まったく仕事に対してやる気や熱意、前向きさが感じられない人、サボってばかりいる人、成果を上げておらず、会社に対してまったく貢献していない人、言われたことしかしない人はいませんか?

大した仕事をしているようにはとても思えないのに、働きに見合わない高い給料をもらっている人はいませんか? そんな人たちを見て、ストレスや不満がたまり、あなた自身のモチベーションが下がったり、生産性が落ちたりしていませんか?

当事者が増えるほど、人は無意識に手を抜いてしまう

仕事に対して前向きになれない人は、仕事に対して当事者意識を持てない人だといえるかもしれません。

「自分が積極的に行動し、この仕事でしっかりと成果を上げなければ」「会社の業績アップに貢献し、自分の収入も上げたい」といった意識がなく、「そこそこに仕事をして、そこそこの給料さえもらえればいい」「自分が頑張らなくても、ほかの人が頑張ってくれるだろう」と考えているのです。

人が増えれば増えるほど、個人個人の当事者意識が減ってしまうのは、「傍観者効果」が働いてしまうからです。傍観者効果とは、集団心理を表す社会心理学の言葉で、「自分がやらなくても、ほかの誰かがやるだろう」と考え、率先して行動しようとしない心理状態のことを指します。

傍観者効果については、ニューヨーク大学のダーリーとコロンビア大学のラタネが、次のような実験を行っています。

その結果、ほかの人がいる状況では一人ひとりの責任感が薄れ、人数が増えれば増えるほど、人は傍観者になりやすく、自分からは動かなくなる傾向があることが判明したのです。

※「傍観者効果」に関する実験
実施者:ダーリー(ニューヨーク大学)、ラタネ(コロンビア大学)
方法:大学生を2名、3名、6名のグループに分けて、各グループ内で討議をさせる。その最中に、突然参加者の一人(仕込み役)が発作を起こした場合、行動を起こした学生の人数や、行動を起こすまでの時間を計測する。
結果:2名のグループでは全員が何らかの行動を起こしたが、6名のグループでは62%の学生しか行動を起こさず、行動を起こすまでの時間も長くかかった。

「ほかの人が頑張ってくれるからいいや」と思ってしまう

1913年に行われた、フランスの農学者であるマクシミリアン・リンゲルマンの実験も有名です。リンゲルマンは、1人から8人までのグループに、それぞれ綱引きをさせ、引っ張る力を測定しました。すると、1人の際の力を100%としたとき、2人の場合は93%、3人の場合は85%と、人数が増えるごとに一人あたりの力が減り、8人のときには39%にまで減っていたのです。