※本稿は、桐生稔『話し方すべて』(かんき出版)の一部を再編集したものです。
筋道を立てて話すのが苦手な人が意識すべき思考
20代の頃の私は、とにかく「ロジック(論理)」という言葉が苦手でした。論理的に筋道を立てて話すことができなかったからです。
それゆえ、上司から「もっと頭を使え!」「よく考えろ!」と何度も言われ……挙句の果てには「お前の頭は筋肉でできてんのか!」と怒鳴られたこともありました。
でも、そんな私を見かねて、ビジネススクールに通っていた先輩が、「トゥールミンモデル」というものを教えてくれたのです。これが私の論理的思考を開花させてくれました。
「トゥールミンモデル」とは、次の3つの思考サイクルを回すモデルです(本来はもっと複雑ですが今回はできるだけ簡単に説明します)。
事実(データ)= 主張や結論の正当性を裏付けする客観的な数字や出来事
論拠(ワラント)= 主張と事実を結びつける理由
主張、事実、論拠を含んだ話の組み立て方をする
例えば、あなたがお酒の飲みすぎを心配されたとします。そのときに、「とにかくお酒を減らしなさい」なんて言われても説得力がないですよね。
そこでこう伝えてみます。
主張:「アルコールの摂取、少し控えない?」
事実:「国立がん研究センターによると、1日あたりの平均アルコール摂取量が69グラム以上で、60%程度もがんリスクが上昇するんだって」
「今、毎日中ビン3本飲んでるでしょ」
「アルコール摂取量は70グラム近いよ」
論拠:「1日1本にすれば、がんのリスクは下がると思うんだ」
「とにかくお酒を減らしなさい!」と言われるより、説得力があると思いませんか。
会社の会議で発言するときも、
主張:「○○業界に参入すべきです」
事実:「SNS上で潜在ニーズが確認できています。でもまだ他社は参入していませんし、今ならほとんどコストがかかりません」
論拠:「ニーズが顕在化したら一気に他社が参入してきます。今がチャンスです」
何かについて意見を述べる際は、主張:□□□ 事実:□□□ 論拠:□□□と、空箱を立ち上げて、それを埋めていきます。