仕事の抜け漏れを防ぐにはどうすればいいのか。話し方講師で心理カウンセラーの桐生稔さんは「大谷翔平選手が高校時代に活用していた『マンダラチャート』を使うといい。目標達成までに必要なことを全て可視化することで、ミスをなくすことができる」という――。

※本稿は、桐生稔『話し方すべて』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

1回の質問で相手のニーズを全て把握するには

上司やお客様からの依頼に対し、「指示通りにやったのに、不満そうな顔をされた……」「一生懸命対応したのに、やり直しを依頼された……」という経験はありませんか?

なぜ、こういったことが起こるのか?

それは、相手が依頼をするときに、ニーズを全部話してくれるとは限らないからです。

例えば、上司から「山田商事様の接待は、コース料理でよろしく」と言われたとします。「新宿の○○という店で、○○コースを、○○時~○○時まで予約して、値段はいくらで……」なんていちいち言いません。察してくれると思うからです。

でも、本来は聞かないとわからないことだらけです。だから、依頼を受けるときは質問力が試されるのです。

あらかじめ、的確に質問ができれば、1回で相手のニーズが把握できます。そうすれば、やり直しも激減します。また、依頼に対してクオリティが高いアウトプットができるため、相手の満足度も上がります。

今回は1回で100%相手のニーズを把握する「マンダラ質問」を紹介します。

大谷翔平選手を怪物にしたと言われる目標設定シートが「マンダラチャート」です。マンダラチャートとは、曼荼羅まんだら模様のようなマス目にアイデアを記入していくことで、必要な項目の整理をしながら可視化していくものです。

相手のニーズを把握するときも、このマンダラチャートを使います。例として、「学習アプリの企画書を作成する」という依頼を受けるときの手順を説明します。

「やり直し」になる人は全体が見えていない

STEP① 9マスを書いて真ん中に「依頼内容」を書く

まず、依頼内容をヒアリングする準備です。

ノートなどに9マスをつくって、真ん中に依頼内容を書きましょう。

STEP② 各マスに質問の項目名を書く

ヒアリングする項目名を書きます。

1段目は、それをやる「目的」、数値化した「目標」、そして「期日」。上段に本質的なものが並びます。

2段目に、「誰が」「誰に」提出するものかをハッキリさせます。

3段目には、具体的な内容を書きます。「ディテール」とは依頼内容の詳細、「リソース」とはお金や人員などの資源、「プライオリティ」は優先度です。どのくらい重要なのかをすり合わせておきます。

STEP③ 相手に質問して埋めていく

実際にヒアリングしていきます。

マス内に書ききれない項目がある場合は、ノートの右ページ全体を使って内容を記載します。ノートに向かって左ページがマンダラ質問、右ページが補足を書くページです。

最初は、いちいちノートに9マスを引いたり、項目を書いたりするのが面倒だと思います。でも、これはハッキリ言えます。いつもやり直しを迫られる人は、全体が見えていません。全体が見えていないから確認事項が漏れます。

マンダラ質問を使えば、「何が質問できていないのか?」「どこがよくわからないのか?」「どの内容が薄いのか?」、これらが一発でわかります。

マンダラ質問で依頼の方向性を定め、内容を埋めていく。これが1回で100%ニーズを把握するセオリーです。