自覚すらしていない「相手の強み」を引き出す質問
部下に対して指導するときや、1on1などの場においても、質問力がカギになります。
人は、自分の弱さを知っているわりに、自分の強さはわかってないものです。
自分の悪いところは、すぐに目につきます。自己分析をするときも、たいがいの人は自分の強みより弱みのほうがたくさん出てきます。
だからこそ、相手の強みを炙り出してあげる「質問力」が問われます。
でも、「あなたの強みは何ですか?」なんてストレートに質問しても、きっと答えは返ってこないでしょう。そんなに簡単には答えられません。もっと、相手の潜在意識にアタックする質問が必要です。
潜在意識とは、まだ本人すら自覚していない意識です。
少し、当社の話をさせてください。
当社は年間2000回、伝わる話し方セミナーを開催していますが、この中でもっとも多くいただく相談が、「人前でうまく話せません」というものです。受講される方の8割は、人前で話すのが苦手です。人前に立つと言葉が出てこなかったり、言いたいことが飛んでしまったり、緊張される方がほとんどです。
そこで、私たちは最初に何を指導するか?
「落ち着いて話せる方法」「リラックスして話せる技術」「自信を持って話せる話法」ではありません。まずは「成功を定義」します。人前で話すにあたり、「何をもってうまく話せたとするか」です。これは人によって違います。
・プレゼンしたあとに、購入してもらえたら成功
・自己紹介したあとに、「名刺交換よろしいでしょうか?」と声をかけてもらえたら成功
定義するからこそ見えてくる世界がある
成功を定義することによって、「そうか、たとえ緊張していたとしても、正確な情報さえ伝えられればそれで成功だ。正確に伝えることなら得意だ」と、自分の強みに気づくことがあります。定義するからこそ、見えてくる世界があるのです。
転職の面接で、「あなたの強みはなんですか?」と聞かれてもうまく答えられないという受講生がいました。その受講生とのやりとりを紹介します。
【私】あなたが考える「強み」とは何でしょうか?
【受講生】誰にも負けないところでしょうか?
【私】そうですね。では、○○さんが、周りの人より意識してがんばっていることは何でしょうか?
【受講生】相手に喜んでもらえること、ですかね……
【私】すばらしい! 何か実施されていることはありますか?
【受講生】えーと、まず自分から挨拶して、相手の話をよく聞くようにして……。そうそう、クレーム対応はかなり得意です
このように、言葉を「定義」すると、まるで相手の脳内をノックするかのように、「そういえば」が出てくるのです。
「コミュニケーションとは互いを分かち合うこと」と定義したところ、「コミュニケーションは苦手だと思っていたけど、自分の好きなことを伝えたり、相手の好きなことを聞いたりすることは得意だ」と考えるようになり、積極的に会話ができるようになった受講生がいました。
「斬新とは、今あるものがもう一段階便利になること」と定義したところ、「そんなにダイナミックなことじゃなくても斬新と言えるんだ」と考えるようになり、500万円もするシステムを毎月5、6件も販売するようになった受講生もいました。
「幸せの定義が『ありがとう』が言えることなら、私はすでに十分幸せでした」という受講生も。
まさに、「○○の定義は?」は、相手の価値観に開眼させる質問です。