韓国の輸出がいくら好調で、経常収支が黒字でも年間数百億ドルなのに対し、ここ数年の対外純債務は1000億ドルほどで推移している。海外資金に自国のファイナンスを依存している状態である。こうした海外マネーは腰を据えた直接投資が少なく、インカム・ゲインなどを目的とした逃げ足の速い証券投資が多い。

韓国銀行の発表では2011年の対内直接投資とそれ以外の投資比率は1対5。対内証券投資額は4782億ドル、それをカバーするはずの外貨準備高は3064億ドルに留まる。日本は外貨準備の9割を米国債、1割を外貨預金で保有し安全性と流動性の確保に努めるが、韓国の内訳は国債+預金が4割、売却が安易にできない、あるいは価値が著しく減価する可能性のある資産が6割近くも占める。かつてのアジア通貨危機や昨今の欧州債務危機のように、海外投資家の自国への資金還流の動きが一斉に出ると歯止めがきかず、経済全体が立ちゆかなくなる。

わが国の場合は毎年積み上げられてきた経常黒字により対外純資産は3兆1323.8億ドルを計上、20年あまり連続して世界一を誇っている。外貨準備高も1兆2958.4億ドルと、潤沢な資産を有する。したがって、韓国に外貨を融通することはあっても、されることはまずありえない。日韓通貨スワップのメリットは一方的に韓国にあると言えよう。

その他の支援として、韓国国債の購入を合意しているが、これも韓国のファイナンスを日本が行っていることにほかならない。しかも、円建てならばまだしもウォン建てというのであるから、韓国ウォンが下落すればウォン建て国債の価値も下がるわけであり、為替変動リスクまで負担するという気の使いようである。日本の財政危機が叫ばれて久しいが、実は助け舟を出せるほど財政には余裕があり、懐も深いことを端的に示している。

侮辱された相手に領土・歴史問題と通貨外交とは別というような、過分で生温い対応をすべきではない、スワップ協定などすぐ破棄すべきという論客は多い。

日本のコミットメントがあればこそ他国も支援に乗り出すが、日本が韓国の経済破綻を座視すればどうなるか。まずはデフォルトに向け大幅な通貨安が発生する。韓国の対日貿易は慢性的に赤字である。韓国側の支払いが滞ると、中間財などを輸出する日本の輸出産業への影響は免れまい。表向きの理由として日本の韓国支援の所以とされるものである。

日本貿易振興機構(JETRO)の試算では、韓国輸出が1%増加すれば対日輸入は0.99%増えるとされる。「ウォン安が韓国企業に追い風」などと悠長なことは言っていられない。日本の中間財や他国からの原材料の輸入価格高騰で、韓国のほうが大打撃を受けよう。

経済破綻は政情不安へと繋がり、係争地域だけでなく日本への経済難民の大量流入もありうる。治安悪化など直接的な影響も出てこよう。さらに、弱みに付け込み影響力拡大を図れる中国にとっても都合がいい。世界経済への直接の影響は限定的でも、裏事情込みの韓国経済破綻の影響とその前段階での支援を秤にかけ、後者に軍配が上がったのが現状だろう。