支持率低迷にあえぐ野田佳彦首相が突如、尖閣諸島の国有化方針を固め、同諸島購入へ向けて所有者と交渉中の東京都に横槍を入れている。が、石原慎太郎都知事が都の尖閣諸島購入の方針を発表した今年4月からもう3カ月。「ただの人気取り」(石原都知事)がミエミエ。官邸の本気度に疑問の声が上がっている。

「国有化を主導しているのは長島昭久首相補佐官。消費増税法案の三党合意成立で味をしめ、保守色の強い政策を進めれば支持率が上がると勘違いしている。集団的自衛権の解釈見直しやPKO法改正も、長島氏が中心」(官邸関係者)

長島氏は米国ジョンズ・ホプキンス大学院で外交・防衛を学んだ米国通。石原都知事の選対幹部を務めるなど石原家と親しく、政府の国有化方針を石原氏に伝えたのも長島氏だった。

東京都に集まった尖閣購入の寄付金が13億円超(7月17日)。一方で「現状維持こそが得策」との玄人筋の主張も根強い。(PANA/代表撮影=写真)

「外務省と防衛省は蚊帳の外に置かれ、長島氏の動きを事前に知らされていなかった。長島氏は、7月13日付の朝日新聞が“尖閣上陸、都に認めず”という記事を載せたことに激怒。“国が邪魔しているように思われる。石原さんが怒るじゃないか”と朝日記者にクレームをつけており、やる気満々。もっとも肝心の尖閣所有者(埼玉県在住の資産家)との交渉は国土交通省出身の内閣参事官任せ。藤村修官房長官は“政府は所有者と接触している”と説明しているが、はかばかしくない。結局は都が購入後、国が買うのではないか」(官邸関係者)

尖閣諸島国有化のアイデアは自民党の安倍晋三政権時にも持ち上がったが、中国を刺激するとして見送られた。

「官邸側は“東京都が買うと、石原さんの反中国の政治的アピールに使われ、日中関係の緊張が高まる。国が買ったほうがいいんだ”と説明しているが、本音は人気取り。小沢グループの離党後も野田内閣の支持率低下に歯止めがかからない。首相は週末ごとに被災地入りし、ロンドン五輪開会式にも出席したがっている。世論受けを狙う懸命のパフォーマンスを続けています」(全国紙官邸詰め記者)