国家公務員の月給とボーナスの引き上げが決定

国家公務員の月給とボーナス(期末・勤勉手当)の引き上げが決まった。12月17日の参議院本会議で給与法改正案が、賛成多数で可決・成立した。2024年度の月給を平均2.76%(1万1183円)引き上げ、ボーナスを0.1カ月増やして年4.6カ月とする内容で、遡って支給される。今年夏に出された「民間並み」の待遇改善として示された人事院の勧告通りの実施となった。

国会議事堂(右手前)と霞が関(左)など=2022年10月26日、東京都千代田区(共同通信社ヘリから)
写真提供=共同通信社
国会議事堂(右手前)と霞が関(左)など=2022年10月26日、東京都千代田区(共同通信社ヘリから)

「物価上昇を上回る賃上げ」を掲げる政府としては、物価が大幅に上昇する中で、政府が率先して公務員給与を引き上げることで、賃上げの呼水としたいという大義名分がある。とはいえ、日本国は巨額の財政赤字を抱える。「民間並み」というのなら、いつまでも赤字を垂れ流している会社がボーナスの月数を増やすというのは間尺に合わない。

中小企業で働く多くの国民にとって、3%近い賃上げはまだまだ実現していない。「隗より始めよ」とは言うものの、これは辛いこと苦しいことを率先してやるべきだという話で、真っ先に国のお役人が良い思いをする話ではないはずだ。

「役人天国」の復活で公務員人気は元に戻るのか

そんな批判を浴びても、霞が関が待遇改善に取り組みたい理由がある。人事院が今年5月に発表した、2024年度の国家公務員試験で、一般職(大卒程度)の申込者が前年度比7.9%減の2万4240人となり、現行の試験が始まった2012年度以降で最少を更新していた。人事院は公務員の「働き方改革」に旗を振っているが、一向に効果が上がらない。人手不足に直面する民間企業の採用意欲が高まっていることもあり、霞が関は敬遠され続けている。

それに何とか歯止めをかけようとしているわけだが、果たして給与やボーナスを引き上げて「役人天国」を復活させれば、公務員人気は元に戻るのだろうか。さすがにこれだけ財政赤字が続き、国債費を除いた年間の収支であるプライマリー・バランスの黒字化もなかなか実現しない中で、将来にわたって安定的な職業かどうか、確証が得られなくなっている。今は、税収が増えているので、待遇改善する原資は捻り出せるが、金利の上昇などで財政破綻が現実のものになれば、真っ先に公務員の人件費圧縮が課題になる。公務員の場合、スト権がない一方で、解雇されない身分保証があり、リストラが行われるリスクは小さいが、逆にいえば一律に給与カット、ボーナスカットが行われる可能性も燻る。