消費増税法案は8月中旬~下旬に参院で可決成立する見込みだが、その後の政治の先行きは視界不良の度を強めている。
谷垣禎一総裁ら自民党執行部は、法案成立直後に内閣不信任案か首相問責決議案を提出、首相を解散・総選挙に追い込み、政権を奪還するシナリオを描いている。が、解散権は首相の専権事項。カギはあくまで野田佳彦首相が握っている。
PRESIDENT誌は、首相官邸をウオッチしている新聞、テレビ、通信各社の官邸詰め記者数名に意見を聞いたが、全員が「今国会での解散・総選挙はない」と答えた。その一人、全国紙官邸詰め記者が話す。
「石原伸晃幹事長は“消費増税法案成立は民主党が党ぐるみでマニフェストの否定を宣言したことになる。解散して国民の信を問わないと野田政権の正当性はない”と主張しています。正論だが、首相が民主党大敗覚悟で総選挙に踏み切る可能性はない。内閣不信任案が可決されたら、首相は解散ではなく内閣総辞職を選び首相を辞任するでしょう」
官邸詰めの通信社記者の見方はこうだ。
「もともと民主党内には、消費増税をごり押しした野田氏の下では選挙を戦えないという声が圧倒的に強かった。野田氏は内閣総辞職後、9月の民主党代表選に立候補せず、前原誠司政調会長か岡田克也副総理のどちらかがポスト野田を襲う。一方、解散に追い込めなかった谷垣氏は自民党総裁を引責辞任。9月の自民党総裁選で石破茂前政調会長か石原幹事長が代表になるのでは」
むろん自民党は「政権のたらい回しは許さない」と息巻くだろうが、野田氏が内閣総辞職で一応ケジメをつけている以上、徹底抗戦は難しい。
「首相の顔が代わると内閣支持率は上昇しますから、民主党は新首相のもと、支持率が回復傾向にあるうちに解散・総選挙を行う。時期は10月か11月でしょう」(前出通信社記者)
別の全国紙官邸詰め記者が話す。
「解散に追い込めるケースは、自民党が“衆院では賛成したが参院は違う”と豹変、増税法案を廃案にしたとき。それなら首相は怒って解散する。でも評判が悪い増税法案は、民主党政権で成立させておきたいのが自民党の本音。廃案はムリ」
自民党も情けない。