観光業の景況感が急回復している
インバウンド需要が本格的に戻ってきて日本の景気全体を高揚させています。経済評論家としての私にとっても地方経済の動向は重要テーマです。特にコロナ禍以降は、出張がある度になるべく現地に宿泊して、地元の状況を見聞きしてこの目で確認するようにしています。
コロナの制約が実質的になくなった今年4月以降では京都、金沢、富山、北海道をそれぞれ訪れたのですが、行く先々で多数の観光客とすれ違い、飲食店や名産品店、市場などでは混雑といっていいほどの賑わいを感じました。ほんの数カ月前、昨年秋から今年の1月頃に訪れた京都、箱根、福井、下田と比較すると観光地の景況感は180度変化した感覚です。
この変化を日銀短観の業況判断指数で確認してみます。業況判断指数は「0」を超えると好況と考えて良いという数字です。日本のすべての業種、全企業規模合計の景況感は2022年9月の調査が「3」だったところから直近の6月調査では「8」まで上がってきました。
なかでも回復が著しいのが宿泊・飲食サービスで、昨年9月に「-28」と最悪の状況だった大企業の宿泊・飲食サービスの景況感指数が昨年12月と今年3月にはともに「0」と中立状態に戻り、6月調査ではなんと「36」まで急上昇しています。つまりこの春以降のインバウンド解禁で、観光関連業種の景況感が日本経済全体を上回るペースで急回復しているというわけです。
支援策で生き残っていた温泉旅館
さて、このようにマクロレベルではようやく回復期に戻ってきた観光業ですが、その一方で最近でも老舗旅館の廃業のニュースが頻繁に入ってきています。コロナ禍の期間ではホテル・旅館の倒産件数は後述する理由で実は減少していたのですが、休廃業や解散の件数は過去最多になっています。
起きていることは、コロナ禍のタイミングで将来を見切って廃業した旅館が増加した一方で、Go To トラベルやゼロゼロ融資などの支援策でコロナ禍に倒産せずに済んだ旅館が一定数いたということです。そして残念ながらゼロゼロ融資の期限が切れる今年以降、逆に膨らんでしまった負債金利に苦しむ旅館が増加しそうです。
とはいえこの先、日本観光が大ブームになるので訪日外国人需要で温泉旅館も生き残ることができるんじゃないか? と考えるかもしれません。そのことを検討してみましょう。