湯快リゾートと大江戸温泉が経営統合
日本の有名老舗旅館でも、例えば青森県の古牧グランドホテルはゴールドマンサックスと星野リゾートの傘下に入って「星野リゾート 青森屋」となり、鳥取県の斉木別館は湯快リゾートの傘下に入っています。
その湯快リゾートは来年春に大江戸温泉物語ホテルズ&リゾーツと経営統合を発表しています。京都に本社を置き西日本に強い湯快リゾートと東日本に強い大江戸温泉が一緒になることで全国に約70施設を抱える一大リゾート会社が誕生するわけですが、実はこの2社はどちらもアメリカのファンド会社であるローンスターの投資先企業なのです。
ファンドの狙いとしてはおそらく大江戸温泉が展開する「TAOYA」というプレミアムブランドをひとつの柱として、日本旅館のプレミアムラインを拡大していくことでしょう。将来的には星野リゾートの競合相手となるプレミアム日本旅館チェーンが誕生することになることが予想されるのです。
生き残れるのは大資本と手を結ぶ温泉旅館
インバウンドの外国人旅行者から見れば、本当は日本を代表する観光地に新たに竣工した和テイストの高級ホテルに滞在したほうが居心地は間違いなくいいはずです。
一方で長年営業を続けてきたその地方を代表する老舗旅館には、常連顧客を引き付けてきた良さがあり、長い時間をかけて培ってきたサービスがあります。ここが新手のビジネスプレイヤーの着眼点です。
老舗旅館のビンテージの良さはそのままでは売り物にはならなくても、投資をしてマーケティングの4Pである「提供価値の中身(商品)」「価格」「集客の仕方」「販売チャネル」を見直せば、十分に生き残る価値が生まれるケースは少なくありません。
そうなると結局のところ重要なことは「投資ができるかできないか」に尽きるのです。それを自前でできる老舗旅館はおそらくは少数派でしょう。ですから、生き残る温泉旅館の多くは、大資本と手を結ぶ決断をすることになるのです。これが残念ながら時代の流れというものではないでしょうか。